ふんわり


ちみっちゃい自分よりは5センチ上ほどの背中目掛けて走る。跳ぶ。そのままアタックチャーンス!

「おわぁっ!?は?」
「驚いた?」

声に出さないように笑う。クククと、悪役みたいな声になった。

「とりあえずビビった」

呆然とした様子が抜けないまま裕行が答えるから、なんだか珍しいものを見た気がして、余計おかしくて、笑いが止まらない。

「なぁ。いい加減笑うの止めろっつーの」
「や、無理。無理だから…フッ、クク…ククッ」
「奈々子の笑い方こえー!」
「なっ!…グッククク…彼女に向かって、笑い方怖いって…ククッ、ひどくない?」
「怒んのか笑うのかどっちだよ!」

久しぶりに裕行をやり込めている自分が、さらにおもしろい。もう、これはアレだ。箸が転がっても、今なら絶対に笑える自信があるね。間違いなしに。

「あー、もうどーでもいいから、とりあえず背中からどけ」
「えーなんでー?」

背中って割と好きなポジションなのに。そして、やっと笑いも収まってきたのに。

「なんでも。オラ、どけ」
「…なんで?」
「…なんでも」
「どうして?」
「どうしても」
「てい!」
「うわっ!なっ!奈々子、テメェ!」

どうしても理由を素直に言わないので、後ろから耳朶噛んでみました。

「ね、なんで?」
「しゃーねーな。言ったらどけよ?」
「わかった。なんで?」
「…顔」

顔?単語?ピンポイント?なに?まったくもって伝わってこないよ、裕行。

「だーから。お前後ろにいたら、顔見れねーじゃん!」

肩から手を離して、ずるずると床にしゃがみ込む。

「裕行ってさ、結構さ、」
「おう」
「…私恥ずかしい」
「ザマーミロ」

あっという間に開き直ってるし。いつもながら、聞いた私がバカだった?いや、バカなわけではないだろうけど。人がしゃがみ込んでいる間に振り向いたらしい。僅かに顔を上げれば、同じ高さに裕行がいた。

「で?俺今日仕事ねーんだけど」

足が疲れてきて、そのまま座り込む。

「家でいい」
「出かけなくていいのか?」
「出かけたい?」
「いや?別に」

そういえば、只今朝11時ちょっと。飲み物とプリン買って、コンビニから帰ってきたら裕行が来てたわけだけど。買ってきたのどこやったっけ?

「奈々子、コイツ食っていい?」

裕行の持っているもの。

「私のプリン!」



fin


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