意味ある悪戯


「あれ?」

たった今、本当に今の今まであった、ラスト一杯のストロベリーティーが、ない!?ソファーには台本を読みふけってる潤くん。嫌な確信を持った。

「潤くん…もしかして、飲んだ?」
「もしかしなくても。おいしかったよ」

やられた…最後の、最後の、お気に入りが…。気を取り直して、そうだよ。冷蔵庫にみかんゼリーがあったはず!一筋の希望を胸に、一直線に冷蔵庫へ。あるといいな。が、ある。ない!…え?ないの?マジで?…ない!

「潤くん…ゼリー……」
「奈々子のだったの?てっきり僕のだと思って」
「普段食べないくせにぃ!」

なんなの、今日は。朝からずっとこんなだよ。嫌がらせじゃなかったら、イジメ?両方同じじゃない?

「も、いい」

大人しく読みかけの本でも読もうかな。と思えば───ないし…。ホントなんなの?本、どこ?

「潤くん…本は?」
「台本?ここにあるよ?」

ちっがーう!しょうがない。DSがこの辺に。ってこれもないんかいっ!なに、この毎度お馴染みパターンみたいな出来事は!やだよ?こんなのと幼なじみにはなりたくありません!

「奈々子、コーヒー入れてよ」
「やだ」

今日になってから初めての反抗。自分で言うけど可愛いものさっ。だって結局体は素直に動いてるし。…そうだ!携帯!携帯があるじゃん!ゲーム入ってるじゃん!ポケットから取り出す。

電源が入りません、神様。

そういえばいつもより軽い…電池パックー!え?迷子?自発的迷子?他発的に決まってるだろっ!

「潤くん!」
「あ、コーヒー?ありがとう」
「あ、はい。どーぞ」

………じゃ、なくて!

「今日はなんなの?!」
「なにが?…んっーん、仕事終わり」
「私の好きなの食べるわ隠すわ」
「僕が仕事中だったから」

俺様理由?納得、いかない。怒るときっと私も怖いんだから。

「認めません。潤くん、なんで?」
「可愛いな、奈々子は。理由聞きたい?」
「も、もちろんっ」

可愛い、って入ったのは私の空耳?だと思い込もうよ!ね!

「理由ねぇ。俺が仕事してる間、奈々子を構えないだろ?」
「そーですね」
「その間に、他のヤツに奈々子がトキメクなんて、嫌だから」
「トキメク…嫌、って、あの、」
「ん?」

ポカンとしたまま横に座ると、ポンポンと頭を撫でられた。

「奈々子が大切だからね」



fin


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