にゃんこ


この度めでたく苗字が変わることになりました。そんな旦那様は…気紛れな猫みたい。

「ただーいまぁ。奈々子ー?」
「お帰りなさいっ!ご飯にする?お風呂にす」
「飯。つか、その台詞、やっぱ長くね?」

バカと口パクしてみる。言われるのが男のロマンだ、言え、っていうから恥ずかしいの我慢して言ったのに。途中で遮るし。

「今お前バカっつっただろ!?」
「しーらない」

でも、それが裕行だから仕方ないか。なんて心の中では笑ってる。

「そんなことより、飯。でしょ?」
「おう」

外で食べてくれば?って言ったことがある。返ってきた言葉は、家帰れば、奈々子がいんだろ?勿体ねー。とのこと。それから一週間。夜ご飯は必ず家で二人で。

「あと10分待ってね」
「おう」

いそいそとコップを出して飲み物の用意。私が下戸だから、それに合わせると言ってお酒はなしで。合わせなくていいんだよ、って毎回言えば、毎回そんな気分じゃないだけだ、と言われる。

「まだ?」
「はにゃっ!?」

ぼんやりとそんなことを考えていたら、いつの間に背後にいた裕行の声が耳元で聞こえて、思わず声が裏返る。

「猫かよ?」

ククッと喉で笑って、腰に腕を回してくる。うなじに額を押し付けて擦る仕草は、猫の甘える仕草みたいで、裕行の方が猫みたい。

「あとは、これ、お皿に盛って、こっちを電子レンジで温めて、冷蔵庫からサラダ出して、終わり」
「ふーん」

腰にあった手が肩に上がってくる。これじゃあ腕が動かせませんが?

「なぁ。休まねぇ?」
「お腹へってるんじゃないの?」
「やっぱアレ言え」
「ご飯にします?ってやつ?」
「そう、それ。最後まで」

やっぱり裕行が猫決定。

「ご飯にします?ご飯にします?それともご飯?」
「ご飯しかなくね?!」
「気のせいじゃない?」

腕からすり抜けて、お皿に素早く料理を移して、テーブルに運ぶ。若干拗ねた顔の裕行は一先ず置いといて。他のものも並べ出して、よし。

「裕行、食べよ?」
「ヤダ」
「先に食べちゃうよ?」

無言で椅子に座った。しかもわざわざ椅子をずらして、私の横に並んで。

「裕行?狭いでしょう。なにしてるの?」

いただきます。という声につられて、それを真似した。

「あ」

口を開けてなにかを待ってる。悪戯盛りの子猫かな、と苦笑しつつ、食べさせる こと5分、機嫌は治ったらしい。



fin


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