君を好きだよ



家の中、明るい部屋、差し込む太陽。ソファーに膝抱えて座って縮こまって。ちょっと前後に揺れてみる。シャワーから出てきた瞳とかち合って、甘えた声で

「お子ちゃま」

そんなこと言われても。口を尖らせてはみるものの。あぁ、本当に君には弱いんだよ。甘えた声には弱いんだよ。ねぇ、わかってる?

「午後、どっか行く?」

言いながら目の前横切って冷蔵庫へと一直線。素通りされたのが悔しいのか寂しいのかなんなのか。勢いつけて立ち上がり、ひょこひょこひょこひょこ後付き歩く。僅かに震える肩を見上げれば、

「お子ちゃま」

本日二度目の台詞が出てきた。好きに呼ぶがいいさ、と拗ねてみる。それでも肩は震えてて、そこまで笑わないの。冷蔵庫から目当てのペットボトルを見つけたらしく、ソファーに戻ってく。同じようにテコテコ戻る。
やけに端っこに座るから、つられたように逆の端っこに座ってみる。テーブルの上に置かれたペットボトル。封を開けられる様子のないペットボトル。なんとなく落ち着かなくて、また膝を抱えようと動けば、先回り。膝の上に重みが増して。下を覗けば頭が乗ってて、横を見れば廊下の向こうがよく見える。

「夜遅かったから眠いんだよな」

こらこら。それは一体誰のせい?どの口がそれを言う?こら。ほっぺを軽く摘んでみる。摘んだ手を掴まれる。掴んできた手に手と重ねてみる。さらにそれに重ねられる手。一番下を勢いよく引き抜いて。一番上に乗った手を叩こうと。

「マジ、お子ちゃま」

失敗。そしてまたお子ちゃまですか、そうですか。年下ですからお子ちゃまでも間違いない。間違いないからもう拗ねるおは止めてあげよう。精神的には年上だもん。

「お子ちゃまは仕事うまくやってんの?」

突然の質問に、一瞬口を閉じるの忘れて。でもすぐに元通り。

「うん。それに先輩達は優しいし。意地悪な達央さんとは違います」
「俺だって優しくしてんじゃん」
「優しくの方向が違うんの」
「なら、優しくの方向、逆転させてみる?」

相変わらず膝の上に乗ったまま、大胆不敵にも笑うから。ペチリと額を一叩き。嘘だ、と入る弁解の声。無駄と分かっていながら流してみよう。いつの間に起きたやら。近い体温に、ああ、まるで、呼吸が止まってしまいそう。

「達ひ…」
「まさか優しい先輩、に俺以外の男は含まれてないよな?」

答えるより先に

「愛してる、奈々子」

口を塞がれた。



fin


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