本当を隠す嘘


好きで好きで、どうしても好きで、好きで堪らなくて、その人と仲のいい人に相談して相談した結果は、やっぱり相談した意味もないようなもので、告白ということだった。当たって砕けて、運が良ければ砕けないで済むかもしれない。嫌いだなんてことは有り得ない。とは言ってもらった。
よし!と気合を入れて今に至ってたりする。目の前に紛れもないご本人。見慣れた笑顔はさすがに今は影を潜めて、代わりの表情はポーカーフェイスで、気持ちを読み取ることが出来ない。

「…あの、返事…もらえますか?」
「…嫌いだよ。リーダー呼んであるから、来たら慰めてもらえば?じゃ」

ガタガタと音を、心の中で派手に立てた。何を言われたか理解して、理解したらしたで涙が出てきた。それでも好きになったのは私だし告白したのも私だし。鳥海さんにはこの涙、見せちゃいけなかったのに。止まらない涙。ごまかそう、そうしよう。背を向けた。

「諏、訪部さんにっ、来る必要ないって」

伝えてください。それだけ言って帰ろうとした。否、足は動かし始めてた。掴まれた腕。

「なに?リーダーじゃ駄目なわけ?」

なんでそんなに諏訪部さんが出てくるんですか?聞きたいけど、喉が鳴咽でひきつって声にならない。振り向けない。そのまま手を振り払う。なんだか拒絶のようで、少し面白く、それでいて少し悲しくなった。そっか……拒絶してるんだ。

「それでは、すみませんけど、連絡お願いします」

そうだよ、嫌われてるんだし、拒絶したって───平気、

「あーもうっ!」

珍しく苛立った声が、数秒前よりも強い力で再び掴んできた。

「離、して…くださいっ!」
「うん……」

離れない手。あぁ、やっぱり。離れられない心。やっぱり好きで好きで、どうしようもないぐらい。でも、嫌われてて、しょうがなくて。ほら、また涙。

「だーもう、だから!」

その声にすくむ。恐る恐る振り向く。

「鳥海、さん?」
「俺なんか信用ならない奴よりリーダーのがよくない?」

なんの話に繋がるの?

「俺と一緒にいたら泣くかもよ?泣かせたくないんだけど」

少しずつ話が繋がる。気持ちが繋がる。

「私は鳥海さんがいいんです。それ以外じゃ嫌だとも思うんですよ」
「…泣かせちゃっ、た。ごめんね?」
「嫌い、は嘘ですか?」
「うん。俺も好きだよ」

そっと抱きしめられた。



fin


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