好きスキすき
100歩、や1000歩譲って、可愛く言えばいじめっ子。可愛く言えば、という話であって。そんな性格にくっついちゃダメなようなものがくっついて出来上がってる。と、最近ようやく認識を改めた。
「なに難しい顔してんの?」
チェシャ猫みたいな顔して近づいて来て、あっという間に両側に手をつかれて、逃げ道がなくなる。ただソファーに座ってるだけなのに。
「……谷山紀章についてそこはかとなく思案してました」
「それならもっとどうぞ。奈々子の困り顔もなかなかのものだし」
普通は!普通ならっ、そんな顔させたくない、とか言いません?
「言われ足りないって顔してるぜ?」
言われ足りない、と言えばそうなんだけど。追加を頼んだところで、希望のものが提供されるかどうか怪しいし。
「そんなに言って欲しいなら言ってやるけど」
「え?」
「そんな顔してると泣かせたくなる。泣かしてほしい?」
えっ…とー…。
「それとも鳴かせてやろうか?」
え…?え、えぇ?!
「けけけけけっこうです!」
「結構いい、って?」
「ちょっ、紀章!ちが、ちがっ」
んっ?!んっんー…
「…んはっ、んっ……」
口の中を荒らされる。てゆーか荒らされてる!現在進行形!ちょっと…息持たない、んだって!思いが届いたのか、離れる唇。
「…もっと?」
「っはぁ…ぇ?」
ふぅっ…んんっ……
「あぁ、やっぱ奈々子の泣き顔もいいな」
「っ…は、はっ」
い、いじめっ子が、います…。
「ん?そんなに良かったか?」
「…紀章……」
「奈々子」
「…殺す気ですか?」
「まさか。愛してるからに決まってるだろ?」
素面で愛してる、と言われると納得しちゃう私が悪いの?え?丸め込まれてる?
「奈々子?顔赤い」
「うっ…」
「な、言えよ。愛してる」
「あ、愛…して…る」
うーわ…満足そう…。満足そうしすぎて、泣けそう。実際、さっきのキスで涙目です。
「あ、そうだ、奈々子」
「なに?」
「もっと、しようぜ」
「ダメっ!まだ、外暗いけど、まだ6時だし、」
「あっそ。じゃ、もっと、するから」
いきなりソファーに押し倒されて?で?……えぇ?!まった、まった!
「奈々子、好きだ。愛してる」
「卑怯っ」
「奈々子のそういう顔見るの好きだからな」
好き、にも色々な種類があると知りました。世界はまだまだ広いです。
「奈々子、愛してるから。ずっと」
fin
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