砂糖に群がる
なんだか出待ちをしているファンみたいだ。なんて考えてたら出てくる出てくる。少しばかり呆気に取られる。そんな中最初に声を掛けてきたのは健一じゃない。
「あー!見たことあるよ」
「福山くん、指差したらだぁめ。行儀悪いよ」
「そうそう。宮田くんの言う通りだよ」
それにしても、と三人に凝視される。うーなんでもないことのはずなのにちょっとした恐怖。えーと、
「福山さんに、宮田さんに…森川、さん?」
「あれ?よくわかったね」
そう答えてくれるのが森川さん。の後ろでじゃれつくような言い合いをしてる福山さん宮田さん。宮田さん優位!
「なにしてるんですか?」
「噂の彼女ですよ」
「ああ。だそうですよ、緑川くん」
「へーふーん…」
居心地が悪い…しかも噂の、ってなに?緑川さんのリアクションはなに?
「だぁから鳥くんのせいだっつーの。俺悪くねーもん」
「えーじゃあスズのせいでよくない?」
「あ、オッケ」
やっと知ってる声と名前が。なにやら不穏な会話だったけど…。
「あれあれまあ。奈々子ちゃんじゃない」
「スズ呼んできたほうがいい?」
「…是非お願いします」
吉野くんがまた建物に消えて、そんなやり取りの中緑川さんと石田さんが帰って、いや、それでも。
「鈴村くんにはもったいないかもねー」
あははーと宮田さん。
「鈴が言ってた以上じゃん?」
にっこり、と福山さん。
「本当に純情可憐ってやつかな」
爽やかに森川さん。
「だしょー?スズには勿体ない」
あっけらかんと鳥海くん。
健一早くっ!と得体の知れない危機感を感じたとき建物から人が。
「スズ閉じ込めちったわ」
…それはどんかな手違いですか、吉野くん…また人増えたし。
「可愛い人ですね」
「杉田さん、出合い頭に口説かない」
「ま、確かに奈々子は可愛いよな」
「それは認めるけどな」
杉田さん?って流れに乗るように吉野くんと櫻井くん何言ってんの?!もう、帰ろうかな。と泣き言が頭に浮かんだ正にその時、ぐい、と力強く体を引かれた。
「俺のものになにしてんの!」
しばしの沈黙。後帰宅。なぜか全員に名前プラスばいばいを告げられた。
「油断も隙もない。こんなんなら写真見せなければよかったか」
「もっ、と早く〜…」
ぎゅっと抱き付く。そっと抱き返される。
「ごめんな。でも手放す気は更々ないからな」
なんのこと?そう尋ねてみたら、
「知らなくていいよ。欲だから」
と額に口付けが降ってきた。このキスに免じて今日は許してあげるとしよう。
fin
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