「俺の」彼女


ツイてない。

まったく。

「来てやったぞー」…って俺はそんなこと頼んだ覚えはない。さらになんでメンバー全員で来る必要が?嫌がらせ以外なんでもないな。おまけにこれでもかってぐらい、

「全員、全力で奈々子を庇い過ぎなんだよ!」
「「えー」」
「全員でハモるな!」

全員揃うと楽しい。確かに楽しい。しかぁし!それ以上に欝陶しくも思うのだが、どうなんだ?

「いーから全員奈々子の回りから半径1m離れろ」
「なんだよー。奈々子は俺のだよねぇ?」
「鳥さん、人の彼女口説かないでくれる?」
「鈴より俺にしとけよ」
「奈々子!リーダーに無条件でトキめかない!」
「僕じゃ、ダメ?」
「ダイサク!商売道具を使うな!」
「あんなやつらより俺がいいだろ?」
「奈々子!よっちん相手に母性本能働かさない!」
「奈々子ちゃん、俺に乗り換えない?」
「広樹くんっ!」
「皆飲み物…」
「奈々子!さりげなく気を使うヤスにまでトキめくなよ」

嫌がらせよりイジメに近いぞこれ。つかさっきから奈々子喋ってないし。まぁ、「俺の」奈々子は人見知りだしな。

「もういいだろ。帰れ」
「「えー」」

ごねるのをやっとのことで全員外に追い出す。

「奈々子ー、ごめんな?うるさかったでしょう」
「健一の仕事仲間の人たち、楽しいね」
「奈々子は可愛いね」

口に出してから自覚。俺なに言ってんの?普段こんなスラッと言わないのに。あーしくじったー。ちょっと自分に気まずくなりながら奈々子を見れば、赤いし。

「なに赤くなってんの?」
「けっ健一こそっ。私は健一につられたからなの。別にストライクに可愛いって言われたからってわけじゃなくて、そのっ」

いい感じにテンパってるねー。それ言うならストライクじゃなくて、ストレートだし。俺の方が落ち着いてる。よし。

「愛してる。…とか?」

さらに赤くなって、睨んでるつもりなのかなんなのかよくわからない表情になってる。楽しいかもしれない。これは押しかけて来たアイツらに感謝かも。

「健一っ!」
「うおっ!」

勢い込めて抱き付かれた。ソファーに寝転ぶ状態になって、上には奈々子が。やっべ、心臓すっごい鳴ってんだけど。

焦り始めた俺を笑顔で奈々子が見下ろして、

「仕返し」

負けました。
その一時間後、奈々子の携帯にアイツら全員からメールが入ったことで俺はさらに慌てることになった。



fin


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