やっぱり寝てて
両手を軽く握り、空に向かい思い切り伸ばす。んんー、というなんとも言えない声が漏れた。ついでに首を傾げると、コキリの小さな音が立った。どれぐらいパソコンと睨み合ってたのやら。自分に呆れつつ、振り返る。振り返った先、ベッドの上。超熟睡しています、と言われなくてもわかるほど。きっと今なら鼻を摘んだ ぐらいでは起きないんだろう。小さな声で名前を呼んでみる。返事はなく、一定のリズムで呼吸する音が聞こえてくるだけ。どうしようか、と思索していると、遠慮気味にお腹が鳴った。そういえば、まだ夜ご飯を食べてない。部屋を移り、簡単に準備を済ませる。今日くらいおかずの品数が貧困でも作り方の簡単なものばかりでも許されるだろう。一応、二人分用意したし。ベッドの脇に行き、少し乱暴かな、と思いつつも肩を揺する。
「ね。ご飯だよ。食べる?食べない?寝てる?」
一度、起こすのが可哀相で、自分一人だけでご飯を食べたら、起きてきた相手に拗ねられ、如何せん、大変なことになった。
「起きないのー?」
ご飯が冷めてしまう。
「一瞬でもいいから起きてって」
こんなに肩を揺すっているのに。
「…起きないとキスするぞ?」
ピクリと瞼が反応したのを私が見逃すはずがない。
「…起きてるでしょう?」
枕元に置かれている相手の携帯を取り上げて、寝たふりを決め込んでいるその額に一直線に、落とす。
「いいっ!!奈々子、なにすんの!?」
「成一が悪いんでしょ」
非難の声が続いてるけど、聞こえなーい。先に食べ始めたら、拗ねた顔で成一も食べ始めた。
「今そんな寝て、あとで寝れなくなっちゃうよ?」
返事はなしで、フイと顔を横に逸らされた。……子供か?仕方ないなぁ。
「成一、ほら、あーん」
がっしり手首を掴まれた。そんなことしなくても、嘘とかないから。
食べた本人はすぐに嬉しそうな顔をして、騙されないぞとばかりに拗ねた顔を作り直した。
だから、子供か?次。
「だって成一と一緒にご飯食べたかったんだよ?」
こんどは照れ笑いしてるし。でもまだダメらしい。うーん、どうしよ。
「奈々子」
「なぁに?」
お?機嫌治ったのかな?
「奈々子からキスしてくれたら、それで許すよ」
結局それをしてほしかっただけじゃん!
fin
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