呆れ惚れて


なんかもうトリプルAって感じ?ウルトラC?違うなぁ。ミラクル?あ、これかも。ミラクル。

「奈々子、いい加減に構って」

ソファー越しに、うにっと乗られた。確かシャワー浴びてたんじゃなかったっけ?なんて思う間もなく、雑誌の上にポタリと雫が落ちてきた。テーブルに投げ置いて、のしかかるのを止めた成一へ振り向く。

「ちゃんと拭いてから来なさい」
「えーやだぁー」

ケラケラ笑って、なんて小憎らしい。しかも手にはちゃっかりタオルを持ってるってことは、

「奈々子ちゃん、拭いて」

やっぱりですか。ソファーに両手をついて俯くから拭くしかなくなり、タオルを受けとる。

「優しくしてね?」

ワシッと乱暴に水分を拭き取っていく。

「奈々子、奈々子ちゃん!ちょっ、お助け、」

手を掴まれた。

「アリガトウゴザイマス」
「それはいいから、どうでもいいから早く上を着て」

「ん?欲情しちゃう?」
「…………」
「嘘です。上ねぇ。暑いじゃん?」
「今は夏じゃないはずだけどね」

まったく。呆れ果てるったらないんだから。でいつの間にか横に座ってるし。上着を取りに行ったんじゃなかったのか。

「奈々子ー」

すっごい笑顔が近づいて来て、首に腕が回って来て、勢いがオマケについて来て、声が遅れて聞こえてきて、はいっ?!ってなった。

「押し倒しちゃった」

可愛く言われても状況はイマイチ把握できませんが。あれ?話の流れはどこに分岐してった?え、今これ中洲に取り残されてる?

「奈々子ちゃんったら、困った顔まで可愛ぃー」
「重い…」

やっと頭を回転させて出た言葉は的外れ的なものにしかなってない。

「ん?俺が上に乗ってるわけだしな」
「ですよね」

ええ、わかってますとも。わかってるんですって。わかってるよ。

「やっぱり成一はミラクルだ」
「なに?ミラクルにカッコいいって?」
「成一のために言わないでおいてあげる」
「奈々子、それ遠回しだけど馬鹿って言ったのと変わらない」

むぅ、と膨れっ面をさせて、ビールぅと冷蔵庫に向かって行く。そういえばビール切らしてたなぁー。

「ビールないしっ!アルコール類すら皆無!?」
「あーやっぱり?」
「奈々子、奈々子、買いに行こ」

わたわたとトレーナーを着て戻ってきた成一に早く早くと手を引かれる。心にゆとりを持って改めて確認。ミラクルなのと付き合ってる。



fin


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