強引キャンディー


「それ甘い?」

口の中でコロコロころころ、飴を遊ばせていたら向かいに立つ男がそう宣った。

「甘いですよ」

というか、棒付きキャンディーは世間一般甘いのでは?そんな疑問が解決しないうちに、そっか。と相手は納得してしまったらしく、またね。と帰って行った。
一人ポツリと残ったラジオブース。

翌週。仕事終了。同時に口の中に棒付きキャンディーを押し込んだ。

「今日のも甘いの?」

もしかしたらこの男は食べたことがないのか?今度はそんな疑問を抱きつつ、甘いですよ。と先週とまったく変わらない返事をした。先週とこれまた変わらず相手も同じ言葉を残し帰って行った。一人ポツリと残ったラジオブース。

さらに翌週。仕事終了。同時に三角形のイチゴミルク味を口の中に放り込んだ。棒付きを買いはぐったという痛恨ミス。

「今度のは甘い?」

今日のは棒付きと違って袋買いしたものだから、食べます?と、バックから取り出そうとして相手を視界から外した。

「もらうね」

やけに声が近くで聞こえるなぁ、と思った。ふっとバックに架かる影が自分のものだけじゃなくなった。なんでだろう?と顔を上げた。

「んっ!…ふぅっ、ん…ぁ」

口の中で飴が転がる。右に、左に。思考も転がる。なにが起きてるのか整理しようとも、口の中を食べられているような感覚に全てが持っていかれる。
やっと離れた影はもう一度合わさり、軽く唇を啄んで離れていった。

「なにしてんですか!」

手を出さなかった自分が偉いと思う。けれど自分のそんな頑張りを余所に、怒鳴りつけた相手はただただ笑顔だった。

「いやー他の悪いお兄さんに獲られちゃう前にと思って」
「なに言ってんですか、若干強姦魔」
「ひどいなー。無防備だった奈々子ちゃんが悪いんだってば」
「いや、明らかに森田さんが悪いですよ」
「成一って呼んで」
「可愛く言ってみても、イヤです」

けちー、とか、そんな照れなくても、とか、強情だなー、とか、とかとか言われてるけども、そもそも、

「付き合うつもりも、遊びだとしても、そんなつもりないです」

って言ったのに関わらず、全くこっちの話なんてお構いなしで、

「悪いお兄さんが寄ってこないようにもしとかないとな」

そんなことを言いながら首筋に顔を埋めてきた。

しっかり抱え込んでいた、しっかり中身の詰まったバックを足の上に落としてやった。



fin


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