赤くなる甘くなる


そういえば。
なんて思ってしまったが最後、気になって仕方ない。

久しぶりのデート。というか、街中デートが久しぶり。さっきからチラチラ振り返る子たちが決して少なくないことは、まぁ、いいとしよう。小野くんの、無防備に風に揺れるシャツの裾を掴む。チラリと見てきたけどなにも言わない。きっと私だけの特権。気になって仕方ないのはこれじゃない。
今度は無防備に垂れ下がっている手を握る。

ビクリとした反応があった。

これ。これだよ。なにこの可愛い反応。

「奈々子、ちゃん…つ、次、どっか見たいとこある?」
「んー特にないかも?」
「…そっか」

握った手に、少し力を込めてみる。微かに握り返された、気がした。付き合い始めて何年?

「小野くん、帰ろ?」
「え?う、ん」

繋いだ手で強引に引っ張って帰ってきてみた。

「座って、座って」
「はいはい」

そうか、家の中で寛ぐのは慣れてるもんね。
ソファーに深く、背中をつけて座ってる。ひょこりと小野くんの目の前、足の間に座ってみる。目が合って、微笑まれて、それはいつまで経っても慣れない。耐えきれずに、少し俯けば、伸びてきた手が髪をいじり始める。今まで私も意識してなかったけど、よくよく考えれば、そうだよね。無意識になら小野くんは普通に触ってくるし。そっか、意識したらダメなのか。ってどんだけ乙女ですか?!…可愛いなぁー。5つも上の恋人に普通抱くような感想じゃないんだろうけど。

「小野くん、あのね」
「うん」

ソファーの上に立ち膝。小野くんの両肩に手をつく。若干不安定になった体勢を補うように、小野くんの手が腰に回された。

「好き。小野くんが好き。大好き」

無言の小野くんに、ただでさえ近い体をさらに抱き寄せられた。今が絶好のチャーンス!アタックチャーンス!

「小野くんは?」

暫しの沈黙。

「好き」
「もっとちょうだい」

気になってるのは小野くんの照れの範囲。

「もっ、と?」
「もっと。ねぇ。ちょーだい?」
「……愛、してる」

限界値?芽生える悪戯心。

「もっと」

沈黙。のち、か細い声。

「世界中で、奈々子だけでいい。愛して、るんだ。だから俺の、」

真っ正面にいるからしょうがないんだろうけど、そこでばっちり目が合った。その一瞬で、こんなにも赤くなる人を初めて見た気がしなくもない。

「もう、いい?」
「小野くん、大好き!」

気になることはそのままにしておこう。



fin


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