日々響く
洗濯物は後回し。朝ご飯の準備よし。カーテンを開ければ、電気を点ける必要なんてない。明るい日差しが、真っ直ぐに差し込んでくる。うん!今日はいい天気。
「順一さん、起きてます?」
寝室に戻る。小一時間ほど前には、自分も横になっていたベッドの脇に立つ。見下ろせば、横向きの状態で寝入ってる姿。まだ、起きてないのよね?
「じゅーんいーちさーん?朝ですよー?起きてくださいですよー?」
耳元で言ってみる。
「ん…」
僅かな反応あり。起きるまでもうちょっと。あと5分ってやつですね!
「起きてくれないと朝ご飯、冷めちゃいますよー?」
緩く肩を揺すってみる。乱暴にはならないように、そうっと。
「あぁ…」
こんな寝起き悪いほうだったっけ?初めてだぞ?もしもーし?
「今…起きるから、」
昨日、何時に帰ってきたんだろう?日付が変わってからなのは確か。だって私はそれまで起きてたから。朝起きたら横にいたわけで。
「何時に帰ってきたんですかねぇ」
「三時…ぐらいだな」
「あ、起きました?」
「あぁ。おはよう、奈々子」
「お、おはよう、ございます」
未だに寝起きの、この掠れ声には慣れない。
「ちなみに寝たのは五時かな」
「五時って───まだ寝てたほうがよかったですよね?!」
つい、自分に合わせて起こしてしまった!今八時だよ!?
「いい。奈々子が折角作った朝ご飯ですし?起きるよ」
優しいなぁ、なんて感慨に浸りつつ、ベッドから一歩下がる。起き上がった順一さんが額にキスしてくる。甘い仕草に、くすぐったくて片目を閉じる。髪にも口付けられた。こんな所まで優しい。
「仕事は夕方からだから、後でもう少し寝ますよ」
「帰りは何時ですか?」
「今日は日付が変わらないうちに帰ってこられる」
夜ご飯は一緒に食べれるのかな?尋ねようとしたら、
「今日は夜ご飯一緒に食べるさ」
だから、わかりやすい顔するな。なんて。私、そんなに顔に出してたのか。
「気をつけて帰ってきてくださいね?」
「ああ。もちろん」
二人揃って椅子に腰掛ける。並べ立てたお皿たちからは湯気が昇ってる。
朝、二人で向き合って、優しい時間。嬉しい一時。
fin
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