オレンジ


西日、夕日、夕焼けこやけ。明日も空は晴れるかな。昨日吊したテルテル坊主。今日もぶら下がりお勤めご苦労。ソファーの上で私は丸まり。今日もあなたは帰ってくるかな?帰ってこない日寂しくて。明日があるよ、と言ってみる。スイッと流れた涙を無視して。

私はホントに必要なのかな?

ゆうらりゆらり、起き上がりこぼし。体が揺れて気持ちも揺れて。別れたほうがいいのかな?

さよなら

紙に書いてみた。書いた文字を眺めてた。いくら眺めても好きだよ、にはならなくて。そうか。これが現実なんだ。
また丸くなって、ゆうらりゆらり。なんだか眠くなってきた。主不在のベットに潜り。窓から溢れる柔らかい太陽が気持ちくて。瞼が閉じた。おやすみなさい。



バタン。大きな音。寝ぼけた頭が起きるより。塞いだ瞼が開くより。なにより早く、力いっぱい抱きしめられて。

「良かった…」
「健一?」

ゆっくり体が離れてく。声の主はやっぱりあなた。じっくり顔を見られて。寝ぼけた思考は追い着かない。

「健一くん、なんでいるの?」
「いや、ここ、自分ちでもあるし?」
「……おやすみ」
「いやいやいやいや。コレなに?」

手にある紙。略したら手紙?中央に書かれた

さよなら

「見つけて、もう心臓止まるかと思った。会えなくなるかと」
「書いてみただけだよ?」
「心臓に悪い。俺を殺す気?」

窓の外彩る橙。まだ眩しくて。眩しさと寂しさがごっちゃになって。なんでこんなに切ないんだろう。

「不安にさした?確かに俺は優柔不断かもしんないけど、一緒にいたいと思うのは、想うのは奈々子だけだから」

「だから、さよならなんて冗談でも言うな書くな」

私は必要?別れたほうがいいのかな?なんて浅はかなことを考えた。

「うん。ごめん」
「まったくだ」

ゆっくりゆっくり近づいて。おでこがコツリとぶつかった。はたまたゆっくり抱きしめられて。温もり篭った体温に、瞼がまたもや閉じていく。

「奈々子?また寝んの?おーい奈々子ー?」

返事する余力もなくて、ただ健一の声だけ聞いていた。

「次の休み、晴れたらどっか出掛けよか」

「雨降ったら…一日中家にいるのも悪くないかもな」

「家の中なら奈々子と二人っきりだし?」

「奈々子、聞いてる?」

とりあえず明日はテルテル坊主を片付けよ。
おやすみなさい、と呟いて。眠い、と意識を手放した。



fin


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