複雑関係完結


幼なじみみたいな腐れ縁。切っても切っても切れないカモシレナイ仲。

好きにはならない、仲。
自覚をしてはいけなかった、恋。
確信すればそこで最後だった、想い。

なんで?と自問自答してもきっかけなんて一つもなくて、馬鹿だよね、なんて呟いて、連絡がないのをいいことに、逃げてみた。最近忙しいみたいだし、丁度いい。

改めて頭の中を整理してみれば、余計にスキが拡がっただけ。………無理!

出来上がった書類を纏めて、ファイルに挟む。───もうこんな時間かぁ。帰ろう。ビルを出ればつむじ風が通り過ぎていき、思わず目を閉じた。再び目を開けば塀に持たれかかってる人。ヤバイぞ!と頭の中で警告が鳴り響く。心臓の鼓動も今までにない速さで生きてる証明をしてくれてる。

「あ、奈々子。いつもこんなに遅いの?」
「す…ず…」

ズキリ、と軋む。胸の奥が悲鳴に似た痛みを感じさせる。

「久しぶり。最近連絡もしてないし、会っとこぉかなと」
「わっ、私、急ぐ…から…帰らないと…」
「明日日曜だけど、もしかして明日も仕事?なわけないよな」

会社勤めはこういうとき不便だ。上手い言い訳なんか思いつけない。

「でも、ま、ご要望通り帰りますか」
「───っ!近づいちゃダメっ!」

あヤバい。そう認識した次には、もう体は駆け出していた。なんで来るの?なんで会いに来ちゃうの?連絡を取らなくなって自然に縁が切れるはずじゃないの?息が苦しい。頭の中はそれはそれは、もう大パニックだ。

「奈々子!」

なんで追ってくるの?なんでこんな近くに声が聞こえるの?なんで、好きになったの?なんで好きになっちゃったんだろ。腕を捕まれた。強制的に体の向きを反転された。涙を見せられなくて、思わず唇を噛んだ。思わず目を閉じた。

「奈々子。奈々子?……奈々子」

呼ばないで。そんな優しい声で音で呼ばないで!

「なんで、逃げるんだよ?」
「だって、離れなくないっだもん」
「やってることと矛盾してるから。ねぇ、なんで?」
「離っ…して」
「無理。なんで逃げる?」

掴まれた場所が熱い。興奮してるせいで全てが熱い。

「だって、だってだって!好きになっちゃったんだもん!だからっ、一緒にいたってダメなのよぅ」

関切って涙が溢れる。はぁーとスズが大きく息を吐いた。

「嫌いじゃなくてね。なんだ、そっか、よかった。うん、よかった」

へ?と驚きに涙が止まる。よか、っ…た?

「明日から健一って呼んでな」

理解するには冷静な頭が必要だった。



fin


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