禁じられた遊び


羊が一匹、羊が二匹、
羊が百二十五

執事が、間違えた。
羊が、百二十六

羊が二百三十…って多っ!気持ち悪っ!
────寝れない。
寝れないのはきっと───



軽口から始まった。

「浮気ってしたことある?」
「ない。あるの?」
「ないね。してみたいと思う?」
「少しだけ。」
「してみる?」



お互い恋人がいて、すぐに終わる関係で、本気になるはずがなくて、結婚まで話がいってる人を裏切りたくなくて、だからほんの遊び心で、切なくて、苦しくて、そんなわけがなくて、とにかくの矛盾。なぜか尽きない自分への言い訳。



「事務所から電話みたい。ちょっと待ってて。」

「もしもし?」
「今なにしてた?」
「こんばんは。」
「明日時間ある?」
「はい。引き受けさせていただきます。」
「待ち合わせメールするから。じゃねー。」
「はい。失礼します。」



ベタな漫画やドラマにあるみたいに敬語を使ってるときは本命がいる証拠、なんて。思い返してみると、やっぱり滑稽だ。気分転換にベランダに出てみて、苦笑交じりに上を向く。



「見て見て。これ俺の。」
「うっわ、美人!てか可愛い系!」
「ボタン押して開けるタイプの自動ドアにしょっちゅうぶつかんの。」
「なんか私みたいだね…。」
「あ、あー、あぁ。」
「いや、忘れて下さい。思い出さないで。」



くだらないことで笑い合って、ナイショのキスも数え切れないぐらいして。愛してる、好きだよ、は一回も口に出さずに、まるで呪文のように「楽しいね」と言い合って。端から見ればなんて間抜け。

涙を流したくなくて、上を向いたまま目を閉じる。



「奈々子、奈々子。」
「なぁにスズ。」
「なんか俺に言うことあるんじゃない?」
「あー…半年後に結婚することに決まりました。」
「それは、おめでとう。俺らは終わろうか。」
「いつ?」
「今日。」



それが一週間前。私が一人暮しを止めるのは一週間後。胸の中にはぽっかり穴が空いたみたいで、寂しい。でも、それでも私が愛して好きなのはスズじゃない。なんで?なにが?スズじゃないことが?スズが良かった?
空には一面の星、が瞬いて、いなくて、どんより雲が覆って、て。混沌としたそれがなんだか私の気持ちみたいで。都会の空は慰めてくれやしないみたいだ。
最後にスズから送られてきたメールを開く。

「好きだったよ?」

こんなの卑怯だ。
夜になって読み返す度に、あぁ、今日も眠れない。



fin


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