*ブルー*
空が見たくなった。
なんて言ったら、お前いまどこにいんだよ、と怪訝な顔をしてるんだろう声音で返された。
「ひどいなぁー、裕行ってば」
簡単に顔が思い浮かんでしまったせいで、込み上げてくる笑いを必死に噛み殺しながら告げれば、今度は逆に悟られてしまった。
「だって、」
理由を告げようにも、わかりにくく例えた自分に非があるのはわかっているから、告げにくい。
「会いたい」
とりあえず理由なんてすっとばして、例えた元をなんとかしたほうがいいかもしれない。こんな時間にいいのか、とも思ったけれど、声に出してしまったものはしょうがない。明日でもいいよ、と口にしようとしたとこで、思いもがけず了承が返ってきた。
さらには、こんな時間だからなのか、うちまできてくれるらしい。大人しく待っておこう。
「んで?」
会って開口一番それですか、なんて疑問はいらないかもしれない。会えた、と安心したら感情が高ぶって、そのままに抱きつく。
「おい、奈々子」
なんて言ったらいいのか、むしろ、言わなきゃいけないのか、今になって照れるわ、あーもう!
「あのですね、」
「さっさと話せ」
「今日、ビル群を歩いてて、ふと見上げたら、見える空がちっちゃいなーって改めて思いまして」
「おう」
ああ、人の話聞きながら、人の髪弄って遊ぶの止めていただきたい。なんだこれ、余計に恥ずかしい。
「そしたら広い空見たいなぁーってなって」
「ビル群のないとこに、旅行に行きたいとか?」
「じゃなくて、広い空って、自分自由だぁーってなるけど、不意に、安心したり、ぼっちだと寂しいってなったりするなぁと思って」
「思って」
「………裕行みたいだなぁーって」
………沈黙っ!沈黙が重い!
ドン引きしてたりするのか、と顔を覗きこんで。
「裕行、顔真っ赤?」
「奈々子が確実に悪い」
「いや、今の、連想した私が恥ずかしいとこだよね?」
「いいから大人しくキスされとけ」
コロコロ表情を変えるとこまで空と同じだなんて。空の下から逃げれそうにはないみたい。
*fin*
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