*止まない*
油断大敵、大胆不敵。どちらにしても目の前の相手は敵だということには変わりないのでは?そんな疑問を頭の中でぐるぐると考えていたら、鼻を摘まれた。驚いて顔を上げる。
「隙あり」
こちらの下唇を食んで相手の唇が離れていく。一瞬の触れ合い。それが分かった瞬間に勢いよく上昇していく自分の体温はどうしようもない。
「顔真っ赤。かわいー」
腕を伸ばして相手と距離を取るけれど、取った傍から手首を掴まれて引き寄せられる。
「なんで逃げるの?」
「な、なんで、だいすけはすぐにこういうことしてくるの!」
「こういうことって?」
わかっているくせに聞き返してくる。
「だっから、あの」
至近距離でじっくりと見つめられて、どうしようもなく恥ずかしくて、赤い顔を隠したくて俯く。
「うん?」
それなのに、わざわざ座る体勢を変えてまでして、こっちを覗き込んでくる。
「俺がなにをするって?」
ゆっくりとした口調で繰り返される質問に、照れが勝って答えることができないでいると目の前の顔がまた近づいてきて、キス。離れると同時に更に俯く。
「言えない?」
上から被さられるような体勢になって、そのまま耳元で囁かれ、息を詰める。
「奈々子ちゃん、顔上げて」
無理です。これ以上ドキドキしたら壊れてしまうのではないかというくらいなのに。
「奈々子?」
無理、と首を振る。
「へぇー?」
掴まれていた手首から力が抜けて、解放かと思えば、掴み方が変わって後ろに押される。
「きゃっ?!」
「質問変えるね?」
そう言いながら、また口を塞がれる。流れてくる熱に、頭の中がフワフワし始める。
「さっきはなに考えてたの?」
なに?なに、は、だって。
「だいすけのこと?」
「俺のこと?」
さっき、というのがどのさっきかはわからないけど、わかる範囲で言えば、間違いはないはず。そしてそれ以外にはないはず。
「ならいいんだけど」
そうしてまたキスされて。本格的にフワフワしてきた頭で考え事を止めて、だいさくの首に腕を回す。
「俺ってやっぱ、奈々子ちゃんに勝てないんだよねー」
それは私のセリフです、とい言葉は再びのキスで音にすることができなかった。
*fin*
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