意識
*小野大輔*
見つめるのは、好き。
見つめられるのは、苦手。
触れるのは、好き。
触れられるのは、苦手。
「あ、あの、あのね、小野さんっ」
「ん?なに?」
「な、んていうか、近い、です」
「福耳だねぇ」
ふにふにと耳を触られる。顔を覗き込むように見られてるせいで、距離が近い。
「そういうことではなくて、ですね?」
「散々俺のこと触ってたじゃん?」
「あ、あれと、これとは、違いますっ」
「一緒だと思うんだけどなぁ」
ふはは、と笑うのを止めない小野さんは、耳からさらに手を滑らせて、たどり着いた先は頬。するりと撫でられて。
「真っ赤になって、奈々子は可愛いなぁ」
意識せずにはいられません!
*神谷浩史*
「見てください!」
「初々しい、初々しい」
「棒読み?!」
「可愛い、可愛い」
「しかも槍投げ?!」
「投げやりだろ!」
ツッコミだけノリノリでいただいても…。
「酷いです、浩史さん」
「なにが?」
「乙女心を弄ぶなんて、です」
え、なんでこんなマジマジと見られてるですか?
「乙女?」
「なに言ってんだコイツ、みたいな目しないでください!」
ふわっふわのロングスカートの端を弄っていた手を放して、フイと横向く浩史さん。
「奈々子は男心を試してんのかっつーの」
「なにか言いました?」
「別に」
*鈴村健一*
ずるくない?
その言葉がぐるぐる頭の中を回る。いや、絶対ずるいって!
「そんな真剣に見られてもコレはあげませんよ」
「寒い。いらない」
「健一さん、意外に寒いのダメですよね」
そうやってアイスを舐めて。ありきたりなシチュエーションでありきたりな妄想定番なんだけど。
「意外って、なんで?」
これ以上見てたら色々我慢が出来なくなりそうだ。
「子供体温っぽいんですよ」
ほら、なんて、警戒心ゼロで手を繋いでくるから。
「奈々子ちゃん。愛しちゃってもいい?」
真っ赤になったから、キスをした。
「健一さんズルイですっ」
どっちもどっち。
*保村真*
「酔っ払い」
「ちょっと油断しただけです」
「そういう問題?」
「真さんにはわかんないですよ」
顔ごと視線を逸らす。そうやっていじけたフリをすれば、ほら。
「奈々子は可愛いなーって思ったんだって」
「騙されないですよ」
妹を見てる感覚の可愛いだろうな。今までとおんなじ。
「可愛い」
「まだ言いますか」
「いや、ほら、いい加減本気出さなきゃ伝わりそうにないな、なんて」
「は?」
「え?」
「奥手にもほどがあるんですよ、バカァー!」
試されてるのかと思って、悩んだりしたのに!
*寺島拓篤*
「あ、ねぇ、そこ!」
迫られて慌てて、一瞬過敏反応してしまって、でも、こっちのそんなことにはお構いなし。
「ああ、ほら、そこだって!」
ゲーム機を持つ俺の腕に手を添えて、画面を覗き込んでくるもんだから、異様に近い。
「少しは考えろっ、バカ奈々子!」
「さっきから考えてるの私ばかりじゃん」
「ゲームについてじゃなく、」
「渉くんコンビニ行っちゃったし、拓篤くんしかいないのにゲームやる以外にないじゃない」
「そういうことでもなくっ」
つうか、いつの間に二人きりなんだよ?!
「変な拓篤くん」
男と二人きりって状況について考えてよっ!
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