わな



*吉野裕行*

「なんかいつもと匂いがちげぇ」
「裕行……犬?」
「あぁ?」
「ごめん、猫だね」
「俺は人間だっつの!」

手首を取られて引っ張られる。その部分を嗅がれる。………え、何プレイ?

「やっぱちげぇ」
「そうかなぁ?」

そういえば、つい最近誰ぞかに貰ったやつだったかも。

「知らねぇ匂いつけてくんな、バカ奈々子」

不機嫌な声で言われて、そっぽ向かれてしまったけど。掴まれたままの手首から、裕行の匂いが移った。



*宮田幸季*

振り向くタイミングを狙って、狙って。瞬間、相手に口を塞がれた。

「んん?!」

一瞬のキスにしてやられた。

「あー、びっくりした」
「幸季…棒読み」
「そんなことないよ?」

狡い、と幸季の服を引っ張れば、少し身を屈めてくれた。

「不意打ち狙ってたのに」
「僕が奈々子に負けるわけないじゃない」

にっこりと、ほっぺにキスされた。いつか絶対勝ってやる。



*保村真*

「あ」
「お」

二人で時計を見て、笑いあって。

「ナイスタイミングじゃない?」
「真さん待たせるわけにはいかないですから」
「俺こそ奈々子を待たせるわけにはいかんでしょよ」

頭を撫でられて、気持ち良くて、目を細める。

「猫みたい」
「可愛がってね」
「猫は気まぐれなんですよ?」
「あら、じゃあ、真さんを誘惑しなきゃ」

なんでそうなる、と笑う真さんに再度頭を撫でられる。素敵な待ち合わせに、満足!



*鈴木達央*

「遅い」

言われて、時計を見る。

「まだそんなに経ってない」
「いーや遅い。何分っつった?」
「……ごめんなさい。お待たせしました。」

ムードもなにもあったもんじゃない態度にむくれつつ、ベッドに上がり、膝を抱えて座る。

「なんだ。襲えって?」
「ちっ、違う!違うよ!」
「そうか?」

首筋から喉を撫でる手が下に向かっていく。逃げ道を探すには、時間切れ。

「まぁ、諦めろよ、奈々子」



*谷山紀章*

時計を確認して、にっこりと笑いかける。

「何時って、約束してましたっけ?」

顔面蒼白。あぁ、こんな紀章さん、初めて見たかもです。

「ふふ、紀章さん。忘れてたわけでは、ないですよね?」
「ごめん!マジごめん!」
「いいですよー………最っ悪です!」

我慢してた涙が溢れかけて、慌てて背を向ける。

「奈々子、ごめん」
「知らないです」

仕事が延びて連絡出来なかったというのは分かってます。でも。

「泣かせたくはないんだって」

少しだけ、今だけ、我が儘でいさせてください。







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