はんぶん



手にした携帯が震える。二通のメール着信の表示を見て、またか、と思うぐらいに慣れてしまった。開けてみる。思った通り、差出人は『寺島拓篤』『市来光弘』の二名。前回は入ってきた順番、逆だったな。内容はお互いがお互いもいることを言いつつ、私も誘ってる。一緒にいるんじゃないの?そうでなければ、どんだけ意志疎通の取れちゃってる仲良しだ。そうであったとしたら、さりげない嫌がらせか?
双方に、同時配送。了解。



「で、今日は何時にも増して、一段と……なんなの?」
「や、奈々子はこっちの方が好きだよな?」
「いやいやいや、こっちだろ?」

重い、重い溜め息をこれみよがしに吐いてやる。

「光弘の方」

いつまでも答えを促されるのも困るし、答えも同時に返す。

「5対4」
「負けるわけにはいかないっ」
「でも俺リーチ」
「悪いけど、みっちゃん。次は俺がもらう」
「俺だって負けるつもりはない」
「ねえ」

熱くなっているところ申し訳ない。

「なんの勝負?」

あ、二人とも真っ赤になった。えーと、前回が時間切れになったモンハン勝負の続きで、前々回がよつばとのフィギュアの所有権。さらに前、は……なんだったっけ?って、そんないい大人がこっぱずかしい勝負を今までしておいて、なぜ今日に限って照れる?

「奈々子!」
「なに拓篤?」
「奈々子」
「な、なに光弘?」

肩を一方ずつ、それぞれに掴まれる。気迫が、怖いんですが。

「「気にしたら負ける」」
「………なにに?」

訳のわからない言い訳をして、さらに二人して目を逸らすな。

「はい、気を取り直して、次!」
「これは?」
「んー、どっちかっていったら、こっち」

指を指せば、分かりやすく拓篤がガッツポーズをして、光弘がしょげた。

「というか、毎回勝敗を決めるのに私を使わないでよ」

あ、二人ともビクッてなった。

「い、いや、ほら、奈々子なら間違わないというか」
「いや、光弘。私は神かなにかか?」
「奈々子が選ぶなら公平なんだよ」
「だから拓篤。私は聖女かなにかか?」

ちなみに今まで10対10だから公平、と言えば公平なんだろうけど………勝負なんだよね?

「これで最後!」
「食べて」

目の前に出されたのは、カレー。今日集まったのは光弘の家。まだ、まだ、マシ。なにより、とは言わない。
片方食べる。…もう片方食べる。

「どっちが美味い?」
「右?左?」
「どっちも……」
「「どっちも?!」」
「まずい!!」



本日の勝負。都合につき、引き分け。

「俺が勝って先に奈々子に告るから」
「拓が俺に勝つ?なに言ってんの?奈々子に先に告るのは俺だから」

二人の会話は、改めてカレーをつくる私には聞こえなかった。





fin





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