そーしそーあい?


奈々子ちゃん、ちょっと聞いてよ〜、なんておネェ言葉チックに言われたから、夜お家で伺いましょう。と返してあげた。お家はお隣さん。しかも互いの部屋の窓の距離は僅か10センチばかり。近いのなんの。窓際に椅子を寄せて話し合うなんて良くあることで、今日もそれだろう。なんて思っていたら、話してる途中に呼ばれた。

「こっち来てよ」
「今日の鳥海君は甘えんぼデスネー」

よいしょ、と年寄り臭い掛け声で窓を乗り越える。知らない人間がこれを見つけたら、不法侵入甚だしい。窓の丁度反対側にあるベッドに腰かけてる鳥海くん。枕なんて抱えちゃって、その格好だけ見て取れば、まるで恋する乙女だよ。

「どうしたの、今日は。なんかあった?あ、もしかして二股バレちゃった?」
「あー……二人とも振った」
「へ?あ、あぁ、また飽きました?そのうち刺されるよー」
「違うって。第一、二股ってそれもアナタの勘違いなんだけど?」
「そうだっけ?」
「片方付き合ってて、片方アプローチかけられてただけ」
「ふーん?」

ベッドの上に投げ出された雑誌。自分も載ってるやつだ。なに聞かれてたっけ?乗り上がって雑誌を手に取る。壁があるから足を伸ばせなくて、足をハの字にして座り、そのまま鳥海くんに背中を合わせて、もたれ掛かる。ほんの少しの間、雑誌を捲る音だけが部屋に満ちる。

「奈々子ちゃんは好きな人イナイのー?」

ギクリと、一瞬心臓が変な動きをしたような感じがした。だって、まさか好きな人はアナタなんですよ、なんて本音、言えるわけないじゃないですか。必死になっていることを悟られないように嘘を吐く。

「いないよ?それより、フリーになった鳥海くんはどうするの?」
「えー?どうすると思う?」
「次を探す?」
「違いまーす」
「違うの?!」

開いていた雑誌を思わず閉じる。私のページまだだったのに。だってまさか探さないなんて!あ、既にまたまた他の人からアプローチかけられてるとか?

「色々邪推してるみたいだけどさぁ、奈々子ちゃん」
「ナンデショウカ?」
「片言デスヨ?ま、それはいいとして、探さないのはそろそろ本気だから」

今ならきっと心臓が冷や汗かいてる自信がある。本気だから。マジ?マジで?

「ソ、ソウナンダ!がんばれー」
「相手知りたい?」
「私も知ってる人?」
「知ってるもなにも、アナタだから」

十分過ぎる間を空けた。嘘、なんて言葉は聞こえてこなくて。

「本気だからな」

マジですか!



fin


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