lamentbile



仕上げにチョコを削って薄く丸まったのを上に盛って、久しぶりにチョコケーキを作った。とりあえず上手くできた。これを大輔に持っていかなきゃいけないのか………。

「もしもーし、大にぃ?」
「奈々子。準備できたのか?」
「今から…多分、行く?」

電話の向こうが賑やかすぎるよ…。

「奈々子一人で俺の家まで来れるか?」
「来いって言ったの大にぃでしょ」
「そうだけど。じゃあ、ほんっとーに気を付けてくるんだぞ」

電話を切ってから、あの家に今何人いるのか、知りたかったような、聞かないでよかったような複雑な気持ちになった。…考えてても仕方ない。あきらめて家を出た。

見上げれば部屋の窓からは光が漏れている。エレベーターは知らない人が入ってきたら密閉空間過ぎて怖いから、テクテクと階段を登る。
チャイムを押せば、複数人の足音。なんとも嫌過ぎて、今すぐに踵を返してしまおうかと考えた。それより早く玄関は開いてしまったけど。

「ケーキ」

言葉少なに手にしていた箱を押し付けて、さっさと帰ってやろうと思ったのに。箱を片手に、こっちまで片手に。強制的に部屋の中。

「あのね、大にぃ」
「いや、中に入らなかったら意味ないじゃん?」

先に中に入って行った大輔の後ろからそっと中を覗く。本当に今すぐ帰りたい。

「噂の奈々子ちゃん、始めましてー。こんばんは?」
「ガチで納得。へー」
「なんか信じたくなーい」
「マジでか?すげぇんだけど」

何で私取り囲まれなきゃならないの?大輔に手を離されたのはともかく、離れる気にはならない。ケーキの入った箱をすっかり大にぃに託して、その腰にしっかり腕を回す。

「奈々子、ケーキ冷蔵庫に入れに行けないよ」
「保冷剤。平気」

部屋の中にいた人たちが紹介しろーと騒ぎだした。苦笑しながら大にぃがそれぞれを紹介し始めた。

「最初に挨拶してきたのが鳥くん。順に、たっつん、よっちん、岸尾くん」
「………こんばんは」

今自分で挨拶しないと半強制で大輔に言わされる、と野生の本能が告げてるっ。
それにしても、見られてる。すっごい見られてる。視線すら怖い。逃げだそうにも体が動かない。





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