legato


そして次の日、しぶしぶながら素直に待ち合わせ場所に、待ち合わせ時間ぴったりに来てしまった。待ち合わせには大輔しかいなくて、嘘だったのか、とホッとしてたら、なんでも他の人達との待ち合わせは現地でだとか。心の準備…心の準備………。

手を引っ張られるようにしてやって来たお店の前で、待ち構えていた人たちの目前まで近づく。三種三様のような反応をされた…と思う。思う、というのは、もちろんその時点で私が大輔の背後に隠れてしまっていたから。

「その子?隠し子とかじゃあ、ないですよね?」
「間違いなくこいつが

話しかけてきた人に大輔が説明をしようとしたら、言葉の途中で違う声が遮った。

「どっかから誘拐してきたとか言うなよ?」
「人聞きの悪いこと言わないでよ、神谷くん」
「は?ありそうだから言ったまでだろ」
「えぇ?!嘘!」

チラリと盗み見るように顔をだしたら、3人のうちの一人と目が合って、慌てて引っ込む。名前を知らないから声の掛けようもないけど、その人はまださっきから何も喋ってない。

「奈々子?ほら、ちゃんと挨拶しないと」

大輔に強引に前に出された。集中する視線に耐えられず、方向転換をして大輔のお腹に顔を埋める。こーら、なんて大輔が言ってるけど、そんなこと構いたくもない。それでも、さすがに失礼だとは思うから、ギュッと抱きついたまま、少し顔を離す。振り返れば知らない人が3人。ゴクリと喉を鳴らして、恐る恐る名前を名乗る。

「毛逆立てた猫みてー」
「なーかーむーらー?むやみに怖がらせるな」

一番最初に話しかけてきた人が中村さん。

「そうだぞ、中村。せっかくの可愛い女の子にはもっと優しくだな、
「なにか言ったか?杉田」

さっきから喋らなくて、なのに目が合って、今やっと喋った人が杉田さん。もう1人がさっき大輔が名前を呼んでた。確か、神谷さん。名前は分かったけど。

「なぁ、中村。やっぱりお前、俺にだけ冷たくないか?」
「お前が喋ると空気が淀む気がする」
「やっぱり俺にだけ冷たいだろ」
「お前は俺に優しくされたいのか?」
「中村が俺に優しいと不気味だな」

杉田さんと中村さんは2人、凄い勢いで話し始めた。大輔と神谷さんは軽く溜め息をつきながらも、別段気にした様子はない。その雰囲気に拍子抜けして、抱きついていた腕の力を緩めた一瞬。

「奈々子、ちゃん?…へー。小野くんに勿体ねーな」

すぐ横に来ていたらしい神谷さんが大輔との間に入ってきて、顎を持ち上げてきた。初対面の、初対面の相手になんていうことをっ!振りほどきたいのに、ジッと見つめられてなぜか動けない。それでも、微かに動いた大輔につられるようにして振り払う。両手で神谷さんを押せば、あっさりと体が離れた。すかさず大輔の背後に戻る。大輔の苦笑する声が聞こえた。

「奈々子は人見知りなんだよ。神谷くんいきなり過ぎるし」
「……本当に攫ってきたわけじゃねぇよな?」
「あれ?まだ俺疑われてる!?」
「疑わないほうがおかしいだろ」
「えー、神谷くんそれ偏見」
「笑うな、変態!」

大輔が、変態?と首を傾げると同タイミングで、中村さんが杉田さんに向かって変態と叫んだ。目に見えて落ち込んだ杉田さんを尻目に中村さんもこっちに加わってきた。





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