Vivo



又従兄弟のほうが従兄弟より身近な存在なんていうのは、割と珍しいんじゃないかと思う。「従兄弟の従兄弟」で、年だって一回り違う。それでも、なんだかんだと構ってくれる又従兄弟は好き。自分が異性の中で、人見知りをしない相手だから余計に。

「大にぃ!」

見つけた背中に飛びつく。やっぱり自分の低い身長はコンプレックスかもしれない。飛びついたところで、こんな小さな塊では、相手を揺るがすことは出来ない。正面に回って顔を見上げる。

「奈々子、迷わず来れたのか。偉い!」
「小さい子扱いしない!それに!ここ、私の家の最寄り駅だし」
「はいはい」

はい、を二回繰り返す場合はあんまり聞いてない証拠なんだ。友達にも怖くないと言われる睨みを利かせて大輔を見る。

「ん?奈々子、どうした?」
「なんでもない」

やっぱり利かないのか。しょうがない。ここは綺麗さっぱり流してあげよう。

「あのね、お昼一緒なのは嬉しいんだけど、仕事は?」
「今日は夕方から。昼間は空いてるから心配しなくていいよ」

ポンポンと頭を撫でられた。そこで大輔の電話が鳴った。その間、大輔の服の端を摘んでフラフラと辺りを見渡す。ただ立っているのはつまらなくて、飽きかけていたら、手を引かれて歩き始める。迷子防止だと言って、手を引いて歩くのは、昔から変わらない。

「それで、相談なんだ、けど」
「歯切れ悪くどうしたの?相談?実は仕事あったとか?」
「そうじゃなくて、明日も昼一緒しない?」

たっぷりとした沈黙に、無言で裏があるんじゃないか、と攻めてみる。

「奈々子?う、裏なんてないぞ?」
「大にぃの、嘘つき。分かりやすいよ。帰る」

背中を向けたところで、ヒョイと腰に腕を回されて抱き上げられた。というよりも、持ち上げられた、というほうが正しいのかもしれない。……逃げれない。

「怒らないでって。大丈夫。変な人たちじゃないから」
「………たち?」

やっぱり帰る!と足をジタバタ動かしても、回された腕を外そうとしても、どうにもこうにも抜けだせない。

「人見知りを少し克服するためだと思って。ね?」
「…だって、だって……怖いじゃん。いきなりだし。っていうか、なんでいきなり?!」
「それはいきなり頼まれたから」
「頼まれた?!だからってなんで了承するかな?普通は断るものだよね?馬鹿バカ馬鹿!」

とりあえず、今日はうんと高いものを奢ってもらうとして。とりあえず、大輔の足を踏んでおく。ピンヒールの踵は凶器なんだ!涙目になった大輔に、まだマシな方だよ、と伝えた。




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