甘い甘い、まるで



*保村 真*

この気持ちをチョコレートみたいに冷やして固めたら、どんな形になるんだろ。

「真さん、もう一回言ってください!」
「二度目はないっ!」
「ヘタレっ!」
「ちょ、奈々子?!」

軽口で叩き付けながらも、緩む口許はどうしようもない。
のんびりとしてる時間の中、今更なこと言ってもいい?という切り口で告げられた

「愛してんだからね」

息が止まるなんて、きっとこういうこと。誰を、なんて聞く必要ないぐらい、真っ直ぐ繋がった視線で言ってくれた。

「私も言いますから、真さんもう一回!」

チョコレートみたいに固まらせた今の気持ちはきっと、ハート型!



*諏訪部順一*

好きだなーっていう気持ちが膨らんで、どんどん膨らんで。

「順一さん良かったですねー」
「なにが?」
「今日のイベント。おとなーな女の方にモテモテで」
「なんだ、妬いてんのか?」
「っ!私みたいなお子様放って」おいてください!

膨らみ過ぎて割れてしまって。
それでもそれでも。

「バーカ。お前がいいから一緒にいるんだよ」
「私がいいから、ですか?」
「奈々子じゃなきゃ嫌だ」
「……それなら一緒にいてあげなくはないです」

懲りずに膨らむ気持ちは、ノンシュガーの風船ガムみたい。



*森田成一*

「ほんっと、さー」

呆れてため息しか出てきません。

「なに?」
「好きだよね」
「なにが?」
「………私の髪弄るのが」

言いながら、視界の端でクルクル揺らされている自分の髪を見る。

「成一がそうやるから、変な癖ついちゃったんだよ」
「そう?」
「そうだよ。髪、濡れててもやるんだもん」
「変な癖って?」
「…この間、美容師さんにパーマかけてます?って聞かれたの」

ニマニマ笑ってる成一の顔。他人事だと思いやがって。

「奈々子に似合うからいいじゃん」
「そういう問題じゃなくて」
「じゃなくて?」

とぼけながら髪にキスなんてしてくる。私の髪は甘い甘い、綿飴にでもなってしまいそう。



*吉野裕行*

甘いけど、甘やかしてはくれなくて。放任主義に近いくせに、変なとこ気にしぃで。

「なにむくれてんだよ?」
「むくれてるわけじゃなくて、考えてるの」
「なにを?」
「プリンみたいだなぁ、って」

首を傾げる裕行がなんだか面白くて、なんのことかは内緒と言ってみる。

「なんだよ?」
「気にしないでいいって」
「やだ」

なー、奈々子ー?なんだよ、と背中を合わせにきて。また、なー、と呼ばれる。気づけば甘い雰囲気なんてのになってる。ちょっぴり苦いカラメルは、いつ食べ終えてしまったんだろ。



*福山 潤*

ぼんやりと、沈む夕日が作り出す橙から藍へのグラデーションの空を眺めていた。

「飽きない?」

頷くと、ホトンと柔らかく頭に手が置かれた。

「奈々子、そろそろ構って?」

なんて言いつつも、横に座って同じように空を眺め始めた。

「なんかこれってのんびりする」
「これだけのんびりするなんて久しぶり?」
「そう、でもないような気はするんだけど、空をゆっくり眺めてた記憶がない、かも」
「潤君は忙し過ぎるよ」
「あんまり構ってあげられなくて寂しい?」

クスクスと笑いながら言うのに、素直に頷く。また頭を撫でられて、少し切なくなる気持ち。金平糖みたいだよ。





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