お買い物
*保村 真*
気になった店舗にあっちこっち、あっちそっち、右往左往。エレベーターの前にポツンと置き去りにした所に、戦利品を抱えて戻れば、何を言うでもなく引き取られた。
「奈々子、満足した?」
「まだまだいける!」
マジかよ的な表情を浮かべたから。
「でも今日はこれでいいことにしてあげるよ?」
「そりゃどーも」
私が両肩に提げてきた荷物。真は片側に提げて。空いてる手を取ってみた。しっかり握り返してくれたから。
「真にお土産もあるんだよ?」
隠してドッキリなするつもりだったことを白状してしまったけど、柔らかく、笑ってくれたから良しとしよう。
*中村悠一*
気になって、その店舗に入ろうとしたら、猫にでもするかのように首を捕まれた。
「なに?」
「何?じゃない。お前な。チョロチョロしすぎなんだよ」
「だって気になるよ」
「ちんまいくせに果敢に人混みに挑むな」
「ちんまくない!」
「さっき駅前でさっそく人混みに流された揚句に言うのか?」
反論……できない。
「捜すとか、苦手なんだからウロチョロすんな」
「しんぱいしょー」
「奈々子、なんか言ったか?」
「なんでもないですよ?悠一くん」
心配させないように、腕にしがみついてみたら、案の定、喜ばれた。
*杉田智和*
あっちだこっちだ、店舗をウロウロするのに、律儀に着いてきては、店舗前で待ってる。エスカレーター脇のイスにでも座ってていいよ?と心優しく諭せば、歯切れ悪く断られた。なぜ?
「智和?つまんない上に疲れない?」
「大丈夫だ。それより、それ、貸してみろ」
…おぉ、荷物持ちだ。
「後はどこを見るんだ?」
「え、あ、さっきの所もう一回、とあっち」
「で終わりか?」
頷けば、時間を確認した智和も頷いて、やけに真剣な目で見てきた。
「な、なに?」
「さっさと帰って、奈々子のファッションショーだな」
どんな服を買ったのか、気にしてる?なんだか嬉しくて、今日はもう買い物終了!
*羽多野渉*
あれやこれや言い合いながら、服選び。店舗のお姉さんにも、随分仲良い兄妹ねー的な目で見られてることに慣れてきた。
「そんなに似てますかね?」
「この場合は見た目より雰囲気かもよ?」
二人して、うーんと首を捻る。考えても分からなくて、結局再びの服選び。
「奈々子ちゃん、じゃあこれは?」
「色、それよりこっちじゃない?」
「これなら?」
「あ、それはあり」
店舗の端から端まで移動して、発見したものを思わず指さし。
「チョッキ!」
思わず叫び。渉に口を塞がれてもがもがしてたら、お店のお姉さんに優しいお兄様ですねーなんて。渉とハモりつつ。
「「彼氏です」」
*神谷浩史*
マジか。心の中で思いっきりぼやいた。とりあえずインフォメーションが近くて、というか隣で良かった。
「すみません、迷子の呼び出しお願いします」
相手の名前の後に告げた年齢に、若干お姉さんの笑顔が引き攣った。迷子なんて言ったから、きっと小さい子をイメージしたに違いない。しばらく待って、やっと現れた相手の頬を引っ張る。
「痛いっ、いたい、痛いって、浩史!」
「今どっから来た?」
「………上から」
「向かいの店覗いてくるんじゃなかったのか?」
「………迷いました」
心に決めた。奈々子、お仕置き決定。
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