グループ、交際?



*鈴木達央*

「なんなんだよ、この状況」
「こーら達央。なに拗ねてんの?」

存外柔らかいほっぺたを軽く抓ってみても、達央は難しい顔を崩さない。崩さないせいで、ちょっと…笑える。

「なにわはっへんだよ」
「ほっぺた伸ばされながら怒られても、怖くないですよー」

あ、ちょっと本気で拗ねた?手は離してあげよう。

「達央?」
「奈々子と二人っきりだと思った」
「……この間、人前なの気にも留めずにキスしてきた男の言うセリフか?」
「あれとこの状況は違うんだよ」
「なにが違うの?」
「これぜってーみっちゃんも加わるだろ。その時点でムリ」

ムリ?なにが?というか、なにをする気だったの?!



*羽多野渉*

「渉くん?」
「うん?」
「二人だけって言ってたよね?」
「そう、なんだけどね?」

困った。困りながら渉くんを見れば、渉くんも本気でちょっと困ってる。

「なんでこうなったんだろ?」
「渉くんがなにか言ったんじゃなくて?」
「いや、俺はただ、みっちゃんに遊びに行くんだって話をね」

しただけなんだけど、と続けられたけど、原因は間違いなくそれだと思うの。

「ごめんね、奈々子」
「ん?なにが?」
「だって、二人だけで、出掛けたかったのに」
「気にしてないよ」

これだけ大人数だと返って賑やかで楽しそう。



*寺島拓篤*

「あの、さ。拓篤」
「なに?」
「すっごい悪どい顔してるよ?」
「マジ?ヤバい?」
「けっこー」

待ち合わ場所に着くなり目に入ったのは不機嫌そうな鈴木くん。困惑しきってる羽多野くん。

「なに仕組んだの?」
「俺だけの仕業じゃないんだけど?」
「じゃあ市来くんも同罪なんだね?」
「奈々子は察しがいいよなぁ」

はぁ、と重々しくため息を吐いてみせる。これ見よがしに。

「ほら、これだけ大人数だと乗り物も貸切り状態じゃん?」
「ジェットコースタージャックに近いね」
「………ジャック」

あーあ。きっと鈴木くんも羽多野くんも知らされてなかったんだろうな…可哀相に。



*市来光弘*

「あ、の………光弘さん?」
「どうした?」

人のことを背後から抱きしめながら息を潜めて。なんでこんな物陰に隠れるようにしてるんでしょう、私たち。

「渉はいいとして、問題はアレたっつんだな。どうやって機嫌取ろう。」
「ん?
「拓なんか案持ってるかな」
「ね、ねえ、光弘さん。もしかして、もしかしてなんだけど」
「どうした?」

にーっこり、大好きな笑顔で問い返されるけど、今日、や、今は負けるもんか。

「もしかして、鈴木さんと羽多野さんに待ち合わせとか誘導しただけで、一緒って言ってなかったとかないよね?」
「あるよ」
「あるの?!」
「この間、皆で遊びに行けたらいいなーって、奈々子言ってただろ?」

あああぁぁぁぁ………鈴木さん羽多野さんには全力で謝りに行かなくちゃ。



*集合*

場所は某巨大テーマパークとまではいかない遊園地。木造のジェットコースタが軋みを上げている。

「みっちゃん………仕組んだ?」
「俺はただこの時間にココで待ち合わせれば?って言っただけ」

渉の問いに光弘はあっけらかんと答ええる。その答えにがっくりと肩を落として達央が確認を取る。

「俺は拓篤から言われたんだけど?」
「それはもちろん俺とみっちゃんが組んでたからに決まってるじゃん」

渉と達央がため息を吐いてから、4人纏めて正面に並び立つ女子を眺める。
一人はテンションが最高潮に上がりきっていて、一人はどん底まで落ちている。残り二人はそれぞれを宥めるのに必死だ。総勢8人の並ぶ列の目的地には8人乗りのジェットコースターが待ち受けている。
渉と達央は再びため息を吐き、男子4人はそれぞれ女子の肩を叩いた。

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