告白秘話
*保村 真*
「好きがっ」
あぁもう、肝心なとこで噛んだよ。
「なにがよ?」
「なにがって、」
「ていうか、セリフ噛まないの」
「そうね。そうだよな」
「そうですよー」
「奈々子、なにがダメ?」
「なにも。保村さんにダメなとこなんて、どっこにも」
流されてたまるか、ともう一度。
「好きです!」
「……そうですか」
「だー変わんねぇじゃんかっ!」
もしかして付き合おうまで言わないとダメな感じ?
*鳥海浩輔*
「ねーねー」
「なに?」
「好きだよ?」
眉を寄せて、いわゆる甘いセリフを吐いた相手を睨む。相手はちょっとたじろいだ。少し珍しい。
「そんな怖い顔しないでよ」
「いぶかしんでるだけ。なに、今の?」
「何って、告白?」
苦笑を返された。告白?なんて言われても。
「信じらんない」
「信じてよ?」
「泣かされそうだからパス」
あ、拗ねた。以外と表情に出まくるんだよね、この人。
「俺は!」
「俺は?」
「おれは…」
なんだ?
「奈々子は絶対に泣かせないって決めてんの」
不貞腐れた表情で言われてしまった。
*市来光弘*
「好きです!」
「なんだって?」
「だよねー」
ガックリとうなだれるしかない。窓側の席に案内されたからなのか、非常に煩い。道路近いんだよな、ここ。
「あのさ。俺は」
負けじと言い直そうとすれば、今度は店員。テーブルの上に置かれるデミグラスハンバーグセットとタラコのパスタ。
「………あのさ、」
「あ、ごめん。飲み物取って来ていい?」
「…いってらっしゃい」
たった一言、たったの一言、伝えたいだけなんだぞ?ガチでこれはあいつらの呪いか?3人の顔が頭の中で回る。………や、渉はないな。2人の顔が回る。
「みつ?さっきからどうしたの?」
「ん、おかえり。奈々子が好きだ」
サラリと言ってみれば、案外言えてしまうものなのか。真っ赤になった相手に頬が緩んだ。
*石川英郎*
好きだよと伝えたいけども、躊躇が生まれる。年齢差だって気にする年頃なのだ、と言えば、笑い飛ばされた。相手もこの気持ちに気づいてしまっていて、さらに俺も相手の気持ちに気づいてしまってる。明確な言葉もないまま縛り付けて。
「英郎さん?どうしたんですかー?」
「あー意識飛んでた?」
「それなりに」
ちょっとボケっとしてた表情が珍しくって、しばらくそのまま見てました。なんて、可愛い笑顔。
「俺はズルいね」
「英郎さんがですか?いまさらじゃないですか」
いたずらな笑顔。
「なんでこんな俺を君は許しちゃうかねぇ」
「そういう気持ちなんですよ」
好きだと告げることもしないで、告げさせることも許さないで。それなのに傍にいるから、甘えて。いい大人が甘えて。
「奈々子、今度、二人でどっか遊びに行こうか」
「本当ですか?!やったー!TDLとかがいいです!」
「ハードル高いなぁ」
でも、その我侭を結局は叶えてしまうんだろうな。
*岸尾だいすけ*
「好き好き好き好き、好きっ好きっ」
「その歌…どっかで聞いたことあるんですけど?」
「そう?オレからのラブソングなのに?」
「絶対、それ違いますよね?」
とういうか、それがラブソングだとしたら誰に向けてのものなのか。
「君に、届けぇー!」
「うなぁっ!なに、急に抱きついて、ちょ、こらー!」
「えー?気持ちが届かないなら、行動でと思ったんだけど?」
小首を傾げられてしまって、ちょっと、それは卑怯。
「奈々子ちゃん、好きだよ?」
「……………」
「あれ?怒った?」
「岸尾さん、しばらく嫌い」
こうなったら徹底的に怒って拗ねてやろう。
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