はっぴーばーすでい



*宮野真守*

「おめでとう」

突然告げられた言葉にとっさに反応できなかった。

「おめでとう」

繰り返された。おまけにご丁寧に触れるだけのキスまでされた。ようやく理解は出来た。出来たけど、反応までがついていかない。

「あれ?俺、間違えた?」

いや、間違えてはいないです。口を動かすけど、音にならない。寝起きの恐怖!

「朝一でびっくりさせすぎちゃった?」
「わかってるなら止めて」

ようやく言葉が出た。相手は嬉しそうに笑う。

「誕生日おめでとう、奈々子」
「……真守の、ばか」

再びのキスを大人しく受け止めた。



*保村 真*

昨日仕事が終わったのはだいぶ夜遅くて。なのに無理して来て。だからゆっくり寝かせておいてあげたい訳でして。目を開けてしまったのを残念な気持ちで見つめる。

「…恥ずかしいよ?」
「恥ずかしがってよ。ふふっ、真さん、おはよう」
「おはよう。んで、おめでとう」

おめでとう?言われた訳がわからずキョトンとしていれば、笑いながら頭を撫でてくれた。

「奈々子……あーた、誕生日っしょ?」
「………あ」

ベッドに突っ伏す真さんの耳は真っ赤。

「俺がいて良かっただろ?」

自分も耳まで熱くなっていく。俺がいて良かっただろ?まったくもってその通り。



*谷山紀章*

「誕生日なんだよね?」

ニッコリと、むしろニンマリと笑顔で言われて警戒しないでか!なんたって去年も同じ手口でとんでもないことになった。それに、そもそもこの笑顔は油断ならない。

「折角プレゼント用意したんだけどなぁ」

そんなに警戒されるとなぁ、とは言ってるけど、表情と一致してないですから!

「な、なんですか?紀章さん」
「コッチおいで、奈々子」

ニンマリと手招きされる。ベッド縁に座る紀章さんに恐る恐る近づく。

「はい。誕生日おめでとう」

渡されたのは手のひらに乗る、小さな、箱だった。



*中村悠一*

「おめでとう愛してる。ついでにおはよう」

早口平淡ぶっきらぼうに言ってのけた本人は、さっさと飯を食いに来いと残し部屋を出て行ってしまった。なんだか今、2つほど大事な単語があった気がする。慌ててベッドから抜け出す。

「悠一!悠一今のっ」
「今の?」
「もう一回!」
「さっさと飯食え、奈々子」
「違う。違う違う、違くて!」
「一回しか言わない」
「ケチ!」

朝ご飯のお味噌汁片手に、フイと顔を逸らされた。

「恥ずかしいんだから言わせるな」

誕生日を盾にわがままを言ってやろうと、心に決めた一瞬。



*小西克幸*

「克幸さん!おめでとうって、言ってください」
「おめでとう」

足りない、と目力に込めて訴えてみる。

「ん?ああ。誕生日おめでとう」

通じた。自分の目力が効いたのか、克幸さんがエスパーだったのか。
ポンポンと頭を撫でられてオデコにキスされた。

「言っとくけど、分かり易いのはそっちだからね?」
「え?わったし?」

…えーそうかなぁ?今度はくしゃりと頭を撫でられた。

「俺からちゃんと言うつもりだったのに。可愛いおねだりなんてしてくれちゃって、奈々子ちゃんったら」

とりあえず、今日は言えるだけわがまま言って。そう言われて抱きしめられた。





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