鈍痛交差い


幼なじみなんて、つまらない関係だと思う。相手が年上だったら余計。五歳の差は大きいよ。マシュマロを頬張りながら、今までテレビに釘付けだった視線をチラリと横に移す。
イテテ。時折そう言って肩を押さえる。

「肩、薬でも塗っておけば?」

自分から地雷を踏みにいってしまったけど、相手はさして気にしていないのか、雑誌から目を離すことなく

「んー」

という生返事を返してきただけだった。気にしていないのではなく、聞いていないのかと納得がいった。また一つマシュマロを口の中に放り投げた。テレビに視線を戻せば、映画はちょうどクライマックスを迎えようとしていた。今は映画の方が隣にいる浩兄より大事。と、思ったのに、急に重くなった自分の背後を気にしてしまって結局映画どころではなくなってしまった。

「浩兄、重いんだけど」
「んー」

やっぱり生返事か。会話を諦めてマシュマロを一つ。

「俺にもそれ、一個」

自分勝手だ。
仕方ない、と装って、内心ではもう外心になるぐらいに鼓動を速めて、一個を肩越しに渡す。自分の手から直接相手の口の中に入っていく感触。抱えていたマシュマロクッションをこれでもかと抱き締めた。




雑誌をめくりながら横にいる人物を盗み見ようと首を動かせば、服が肩に擦れた。

「イテテっ」

幼なじみなんて損だ。手が出せない。というか出したくない。だからってこのままどうでもいいのと付き合うのはなー。それでも五歳という差が怖い。なんてことを考えていたら奈々子の声がした。なにか尋ねられたらしいが、聞いてなかったものは仕方ない。

「んー」

雑誌に夢中になってて生返事。のつもり。また奈々子の意識が映画に向かってて失敗した。もう一度自分に意識を戻させたくて、奈々子の背後に移動。肩の痛みは心の中でだけ呻いておこう。回った奈々子の背中に寄り掛かる。背中と背中で伝わる体温が熱く感じる。あー柄にもなく鳥海くん緊張しちゃって。

「浩兄、重いんだけど」

緊張しすぎて思わず生返事。俺っぽくなくない?緊張をごまかそう。それがいい。

「俺にもそれ、一個」

顔も見れずに差し出されたマシュマロ。その手すら甘く見えた。触れたら甘くなくなってしまうんじゃないか?これは向き合ってしてほしいな、と思いながら直接口で受け取る。
そうしてから緊張をごまかすには逆効果だったと気付いた。なんとか意識をそらそうと読み終わってしまった雑誌を開いた。



fin


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