雨降り
*鳥海浩輔*
ベッドにうつ伏せに寝転がってクッションに顔を埋めた。
「奈々子、なにふてくされてんの?」
「浩輔さんには関係ないですから」
「あっそ」
流れる沈黙。くやしい。
「普通、なにかあったのかとか聞きません?」
「関係ないんでしょ?」
余裕綽々の表情で言われて、逆にこっちが言葉に詰まる。
「せっかくのお休みが雨だからふてくされてるんですよ」
「あっそ」
「浩輔さん!…?!」
また話を流すのかと、慌てて顔を上げれば不意打ちのキス。
「その代わり2人っきり、だろ」
……してやられた。
*諏訪部順一*
ソファーの上で膝を抱えて座る。膝に額をつけて俯いく。
「どうかしたか?奈々子?」
いつの間にか横に座った順一さんが頭を撫でてきた。
「だって、」
「だって?」
「雨降ってるじゃないですか」
「降ってるな」
だからそんなにむくれてるのか?なんて、クスクスと笑われた。
「折角二人揃ってお休みなのに」
「出掛けられない?」
素直に頷く。だって、本当にその通り。また頭を撫でられた。
「でも、雨だから二人っきりなんだろ?」
その通りです。そう思えば、外を降る雨が好きなれた。
*中村悠一*
鬱憤を晴らすべく、作りかけのクッキーの生地を叩きつける。
「苛々してどうした?」
「別に」
普通クッキーの生地を叩きつけたりなんてしないけど。今は許される。
「別に?」
「なに?ちょっ?!悠一!」
生地は纏まっているからベタついてるなんてことはないけど、無造作に手を掴まれた。
「生地に八つ当たってる理由は?」
「べ」
「別に、以外で。……奈々子」
分かってるくせに。思わず朝起きて一番に叫んでしまったんだから。
「雨降って折角の休み出掛けられないし」
「二人っきりのどこに不満があるんだ?」
……それも朝聞きました。上手の悠一にイライラ。
*鈴木達央*
つーまーんーなーい!そう心の中で叫びながら、寝そべってる達央の背中に十字に重なるように寝転がる。
「なんですかー?重いんですけどー?」
「………」
「返事ぐらいしろよ」
それでも無言で通せば、よっこいしょなんて掛け声で達央が起き上がった。
「不機嫌の理由、なんだよ?」
転げ落ちるかと思えば、達央に膝枕される状態になった。親指の腹で眉間を押される。
「なぁ。なんで眉寄せてんだよ?」
降参。
「雨降りなんだもん」
「はぁ?それがなんだよ?」
「折角達央も今日お休みなのに」
ペシリ、と額をはたかれた。
「雨だから家ん中で二人っきりなんだろ、バカ奈々子」
そう言って横を向いた達央の首まで赤くなったのが見えた。
*鈴村健一*
クッションをギュッと抱きしめる。ギュウギュウに抱きしめて、クッションはちょっと苦しそう。
「ねぇ」
自分がクッションを抱きしめているように、後ろの人物から抱きしめられた。
「クッションにヤキモチ。不機嫌さん、どうしたの?」
肩に顎を乗っけられているのか、耳元で声が聴こえる。クッションを抱きしめる力をちょっと緩める。
「雨。今日休みなのに、きらい」
抱きしめる力を緩めたのに、抱きしめられる力は強くなった。反比例。
「雨がきらい?」
「いつもはすき。健一と休み一緒なのに降ってるのがきらい」
更に抱きしめられる力が強くなった。仕方ないからクッションを離す。
「二人っきりなんだから、きらいなんて言わないでよ、奈々子ちゃん」
「ん…健一がいいならいい」
後ろから抱きしめられたまま、ほっぺに、健一の唇が触れていった。
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