らばーずあぴーる
「飯付き合え」
そんな一言で中村に誘われた。そういえば、一人でご飯は好きじゃないって言ってたな。なんて思い出していれば、強く腕を引かれた。
「あの人に見つかる前にさっさと行くぞ」
あの人?と首を傾げたら、私と中村の頭を後ろから誰かに鷲掴みにされた。私は痛くはないけど、中村は声を我慢してなんだか痛そうだけど。
「二人でどこ行くんだ?」
振り返れば、神谷さん。中村が舌打ちしたような?
「中村、言ったよな?抜け駆けすんな」
「アンタ人のこと言えないでしょう」
「なにが?」
「昨日、聞いたんですけど。二人で映画」
「だってお前、杉田と飯だったんだろ?」
抜け駆け?二人で映画?
「そんなことより、飯行くんなら俺も行く」
「神谷さん、」
「奈々子は俺が一緒でもいいよな?」
いきなり話を振られて、慌てて頷く。
「な、奈々子は俺が一緒のほうがいいって」
「曲げて解釈しないでください。一緒でもいい、ってことでしょう」
「じゃあ中村、お前は俺も一緒のほうがいいよな?」
「俺は奈々子と二人だけのほうが、」
「俺も居たほうがいいよな?淋しがり屋の中村くん」
「………それはそうなんですけど」
淋しがり屋……やっぱり、
「神谷さんから見ても、中村ってやっぱり淋しがり屋ですか?」
え?に濁音をつけた、書き表すことはできないだろ声で神谷さんと中村がハモった。仲良しだ。
「中村、一人でご飯嫌いとか、極力一人ぼっち嫌うじゃないですか。だから、なんかほっておけなくて」
これからご飯一緒に行ってくれるのも、そんな中村のためなんじゃないんですか?と繋げたら、神谷さんはすっごい嫌そうな顔になった。あれ?反対に中村はちょっと嬉しそう。
「中村を、ほっておけない?」
「え?そんな感じしないですか?」
「奈々子、昨日神谷さんと映画行ったのなんで?」
「え?あれは、あの映画気になってたんだよね。見たくて」
神谷さん、目が据わってきてる?!中村ちょっとどころじゃなく嬉しそう?!
「ほら、神谷さん」
「うっさい。黙れ。バカ村」
「負けたからって、人を変な名前にしないでください」
負け?勝ち負け?なんの?
「あ、でも、神谷さんと一緒に映画見るの好きです」
は?とまた二人がハモる。
「他の女の子の友だちと一緒に行くときより、なんだかドキドキしましたもん」
今度は喜哀がさっきと逆になった。
「奈々子、先に外出て待ってろ」
「帰らないで待ってろよ、奈々子」
追い出された。中村も神谷さんも、女の子を待たすとは酷くない?しばらくして二人が外に来た。結局ご飯には3人で行くことに決まったみたい。なんの勝ち負けを決めていたのか、予想してみようとはしたけど、思いつかなくて、そのうちわかるだろう、と諦めた。
fin
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