あまあま


「まーくん?」

大人しい背中に声をかけてみた。んー、と眠さ限界といった声が返ってきた。

「眠いなら寝なよ?」
「んー…」
「疲れてるでしょ?」
「んー」

日は既にてっぺんを通り越してしまったけど、まだ沈むには早くて。カーテンを開けた窓から差し込む日差しで、部屋の中はだいぶ居心地がいい。

「まーくん。ほーら、ベッドいきなって」
「やぁだ」

わがまま言われても……。今日は時間がゆっくり流れる気がする。横に座って、肩に寄りかかる。そこから伝わってくる体温がちょっと高いのは、やっぱり眠いからなんだろうな。

「奈々子、なんか、ちょっと、ひんやりして、気持ちー」
「まーくんの体温が高いんですー」
「いや、眠くないですから」
「なんで敬語?」

クスクスと笑えば、その振動がお気に召さなかったのか、むずがられた。頭を撫でれば、また大人しくなって、やっぱり、また笑いそうになった。

「奈々子といるのに寝たくない。夜じゃないし」
「……ねぇそれ、重要なのは前者だよね?」
「今、まだ3時だし」
「後者なの?!」
「冗談」

倒れこんできたから、自動的に膝枕。なんというか、相変わらず、

「甘えるの上手いんだから」
「んー?」
「今度は聞こえないふりですかー?」
「奈々子の声も気持ちーから堪能してんの」

絶対勝てない。甘やかすな、って言われたとしても、勝てないと思う。

「ねぇねぇ」
「はいはい」
「おやつにしませんかー?」
「奈々子食べんの?」

おでこを叩いたら、ペチとマヌケなような小気味良い音が鳴った。それでも、力は全くいれなかったから、叩かれた方もケラケラと笑い声を立ててる。

「もー。まーくんはどっからそんな発想が出てくるかなぁ」
「おやつイコール甘いものイコール奈々子」
「甘いものの後ろのイコールが間違ってるよ?」
「ははっ」

声を挙げて笑ったかと思えば、上半身を起こしてキスされる。

「ほら、甘いじゃん」
「それはまーくんのが、」

言いかけて、口を噤む。奈々子は甘いよね、とあちこち舐められたことがあるんだよね。

「奈々子、続きは?言ってよ」

勝てない。自己暗示みたいに頭を回る。勝てない。

「まーくんのが、甘い」
「奈々子が自分でわかんないだけだよ。絶対奈々子の方が甘い」

口では勝てない。甘いのは、こんなうららかな休日なのだと、終わりない言い合いに区切りを付けた。



fin


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