勝ったつもり



我慢大会でもしてるのか、と問いかけたくなるような状況。というか、なんで私だけが相手の行動をいちいち気にして、そわそわしてるのさ!今日一日、キスというタイミングタイミング、全て逸らされる。

「悠一。ちょっとこっち来て」

呼べば、存外素直に近寄ってきた。その口元に、夜ご飯のたまごスープの入った小皿を近づける。

「味見。濃い?薄い?大丈夫?」

自分で小皿を持たないで、私に持たせたまま悠一はそれを口に含む。近すぎる距離に体温が勝手に上がる。そもそも、小皿は渡そうと差し出した高さにしかないのだから、必然的に悠一は屈むことになっていて、その状態で顔を上げたりなんかされたら、

「上手いけど」

珍しい褒め言葉と上目使いって、どんなコンボ技ですか?!手から皿が落ちそうになる、と思ったけど、悠一の手が漸く伸びてきて支えられたので事なきを得る。ジッと目が合って、キス、とか思えばあっさりと顔は離れていきやがる。煽るだけ煽られてる?………負けるもんか。

「奈々子?どうした?」

夜ご飯を食べ終わって、この日またも珍しく、悠一が洗い物をやってくれてる。その背中に抱きついて、腕を回す。

「なんでもないよ?」

服の裾から手を入れて、脇を撫でる。悠一が短く、息を詰めるのが分かった。水を止めてから降参、とでもいうように両手を挙げて、悠一が振り向く。振り向き様に自分からキス。

「奈々子……んっ、は……珍しくないか?」
「そうかな?」

自分から舌を絡める。されるがままになってる相手は珍しいとは思う。服の中で回したままの手は、今は肩口にあって、キスをしながら少し爪を立てる。

「絶対珍しいぞ」

そう言いながら床に座り込んでいってしまう。それに合わせて自分も立ち膝になる。

「そんなことないとは思うけど?」

肩に今度は唇を当てて、甘噛み。そうしてから舐めてみて。喉元も舐めてみる。首筋にそってキスを繋げて。今日こそ勝ったかもしれない、と満足して顔を上げれば、にやり、そう、にやりと笑う悠一と目が合った。

「奈々子、ごちそうさま」
「え?な?え?」
「いや、奈々子の襲い受けっていうのも1回見ておきたかったからな」

ここまで威力あるとは思わなかった。いい加減限界。そう耳元で囁かれて一気に形成逆転。もしかさて、これって体よく、掌の上で転がされたの?!



fin


- 194 -

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -