共同戦線
大輔を見つめる冷めた目は二人分。二人分の冷めた目に見つめられる大輔は一人分。
「こんなキモカッコイイとか言われて喜ぶ変態が二人もいて堪るか」
思わず口に出したら、横に座っている人物は勢い良く吹き出した。正面に座る人物はちょっと笑顔が引きつった。
「奈々子、面白いこと言うな、真性ドMに向かって」
「いやぁ、浩史には負けちゃうよ」
「あの、二人共?」
お酒の力って凄いですねー、と飲んでもいないお酒のせいにしてみる。同じく全く飲んでいない浩史も、そうだよな、と同意してくる。これまた一口も飲んでいない大輔が更に口を挟んでこようとするのを雰囲気で拒否ってみた。お酒を全く飲まない私の家に居るのだから、飲んでなくて当たり前なのだけど。
「大輔、アイス食べたいな。あ、買いに行けとか言わないから大丈夫。冷凍庫に入ってるから」
「………はい」
大輔が取りにいっている間に浩史にも聞く。アイスを1本手に戻ってきた大輔が、再び腰を降ろした瞬間。
「ハンサム、俺にも1本。奈々子の許可もらったし」
「………はい」
また1本手に戻ってきて、同じ動作をしたとこで、
「大輔も食べなよ?ね?」
「……はい」
まるでスクワットでもしてるみたいだよ、大輔。浩史も同じことを思ったらしく、ちょっと憐れんだ目になってる。それでも、それは一瞬のことで、既に次は何をしてやろうかという顔になってる。黒い、黒いよ、浩史。
「奈々子、お前、何を考えてるのかわかんねぇけど、多分俺とたいして変わらないからな」
「やだな、浩史ったら。何考えてるかわからないのに」
面白いこと言うねー、と笑えば、お前のほうこそ、と笑い返された。たまらず大輔が口を挟んで。
「二人ともが恐怖なんですけど?」
「浩史、そもそもキモカッコイイって、どうなの?」
「俺なら呼ばれた瞬間に躊躇いなく瞬殺してやる」
「あ、私も。カッコイイだけなら素直に喜んでいいだろうけど、キモいがつくとね」
「それで喜ぶのは、今俺たちの目の前にいる真性ドMぐらいだろうな」
「や、だから、あの、二人とも……」
憐れんだ、ではなく嘲りの目を大輔に向けてやる。もちろんツーカーの仲の如く浩史も同じ目。
「なんだよ、キモ?」
「神谷くん?」
「どうしたの?真性マゾヒスト?」
「奈々子も………」
あ、ちょっと大輔泣きそう。浩史の表情を盗み見る。あーすっごい嬉しそう。絶対浩史のほうがドSだと思うんだよね。
「今日、俺なにかしました?」
思い起こしても、原因は何もないんだけどね。浩史が楽しそうなので、無駄な横槍は入れないでおこう。そんな平和なとある休日。
fin
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