デートでドーダ!
「平気です!」
テーマパーク、といってもショッピングまで楽しめてしまう場所にて。入場料はかからない。せっかくだからと何かに乗ることにしたわけだけど。
「声震えてる。無理しないでいいんだよ?」
「渉さん!わっ私、平気です!」
ジェットコースター類なるものに、嫌悪はないけど、ぶっちゃけてしまえば恐怖はある。それでも!
「奈々子ちゃん、本当に、無理してない?」
「はい」
「声震えてる」
心配そうに眉を寄せて覗き込んでまでくれるけど、意思は堅いのです!
「だって、渉さん、楽しそうで、私だって楽しそうで、だから、えっと」
「ふっ、はっあははっ!奈々子ちゃん日本語おかしくなってるよ」
「えぇ?!そうでしたか?!」
あたふたとしている間に、しっかりと手が握られた。
「ジェットコースター、乗ろうか」
「はい!」
「怖かったら叫んでもいいし、僕の手しっかり掴んでなよ?」
「もっもちろんです。望むところです」
いつものラジオやドラマCDとかでは見れない渉さんの姿。私しか知らない姿。こんなにも頼りになるんだから!なんて、誰に向けでもないけど、心の中で叫んでおく。ちょっとジェットコースター挑戦への勇気だって、何倍にもきっとなる!
そして、いざ挑戦!
「奈々子ちゃん、大丈夫?」
「はい……大丈夫です………。それよりも、すみません」
「えっと、僕は大丈夫だから。ね?少し休もう?」
結果は惨敗だったわけで。さらに言えば、渉さんの手の上に私の手を重ねていたのに、こともあろうか、途中で爪を立ててしまった。
「わ、たし、カバンに絆創膏……」
「平気だって、ほんのかすり傷なんだし。奈々子ちゃんのほうが重傷」
ゆっくり歩いてくれる渉さんの背中を、ゆっくりと追いかける。振り返っては様子を見てくれることに心の中で合掌。ごめんなさい、涙が勝手に出てきます。空いたスペースに腰を降ろした渉さんを真似する。
「大丈夫?ね、泣き止んで?」
「平気です…。乗りたいって駄々捏ねたのも私なのに」
せっかくゆっくりじっくりの久々デートなのに。迷惑、かけちゃった。
「奈々子ちゃんといると飽きないよね、本当」
「ふえ?」
「予想つかない、というか、予想以上」
クスクスと笑う渉さんの雰囲気に、一気に飲まれていく。怖くて重かった気持ちは、軽くなっていく。
「も、もしかして、イヤですか?」
「そういうとこも好きだなーって」
「…渉さんのほうが予想以上です」
「かも。奈々子ちゃんをイジメてみたくなっちゃった」
ゆっくりじっくりの久々デート、やっぱり嬉しくて、凄いドキドキしてる。伝えたくて、奇跡に近い、自分から渉さんに頬へのキス。
「そんな渉さんも、その…好き、です」
二人で照れて、赤く染まった。
fin
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