貴方と君との今


「ねぇ浩史。もし子供出来ましたって言ったらどうする?」
「子供?誰の?」
「いや、だから浩史と私の」
「お前が母親?想像するに難しいことさせるな」

想像するに…難しぃい?それはさらっと流しちゃいけないとこだよね?聞き流しちゃいけないとこだよね?

「女の子は誰だって母親になるんです!」

大宣言すれば、浩史は一瞬面食らった顔をして、すぐに呆れ顔になって…うわ、ため息までつかれたよ!

「な、なに!?」
「世の中にどれだけ母親務められない奴がいると思ってんだよ」

確かに、とか思えてしまうから言い返せない。

「奈々子が母親?」
「だ、め…かな?」
「さあ」

それって冷たくないか、なんて機嫌を斜めにしてみれば、すぐさま冷たい麦茶がリザーブされた。浩史が用意してくれる上に、この気遣い。それで許してしまう自分もどうかと思うけど。

「ま、俺がいるから余裕だろ」
「……浩史、子供好きだっけ?」
「さあ。でもお前と俺のなんだろ?」

なら間違っても嫌いにはならないだろ。



なんてことを話した翌日。

「実は、本気で子供できたみたいなのです」
「はあ?!なんで昨日それ言わないんだよ!」
「だって、子供嫌わないって言ってくれたのが嬉しくて、つい」
「さっさと籍入れに行くぞ!用意しろ、用意!」



あれだけ焦ってた浩史は多分、間違いなく、後にも先にも、もう二度と見れないと思う。

「それにしても、実際浩史のほうが子育て巧いなんて」
「またそれ言うのかよ?」
「かよー」

浩史が抱っこしてる、やんちゃ盛りの3才はどうもお父さんの真似をしたがるらしい。

「奈々子、拗ねんなよ」
「なよ?」
「だって」
「ったく。別に下手なわけじゃないからいいだろ」
「ほんと?!」

子供が間にいるけど、ちょっと嬉しいことを言われて、詰め寄る。受け渡されて、距離を取られたけど、

「ママしゅきしゅきー」

愛しい息子にぎゅっと頬ずりされたら取り替えされた。

「奈々子ママはパパのだって言ってんだろ」
「息子になに言い聞かせてんの!」

本人はきょとんとした顔をしてるから、やっぱりまだ意味はわかってないんだろうけど。

「ちなみに奈々子、こいつも俺のだから」
「え?」

あ、なんか小馬鹿にされてる?

「俺も奈々子のだし、こいつのだってことだよ」

わかりきったこと言わすな、なんて言う浩史の顔が普段より赤く見えた。



fin


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