勝利者限定一名様
「ほんっと、安元はジミニーだよね」
そう言って嘆けば、ジミニーという単語にその場に居た5人全員が眉を顰めてくれた。……なんとも失礼な。そんな哀れみの眼で見られなくても大丈夫です!心の中で力んだところで、例えた人物から質問が上がった。
「奈々子ちゃん?ジミニーって?」
周り4人を無視して。
「知らない?ピノキオに出てくるコオロギ。緑色のあのちっちゃいの。ピノキオの良心」
そう説明すれば全員が納得した声を上げた。
「確かに」
「そう……か?」
「いや、そうだろう」
小野さん、中村、杉田さんと理解…を示してくれた。中村はギリギリだけど。安元は少し困り顔で笑ってる。
「そうか?」
「そうだって。だって他は放っておいたら悪化の道を辿るだけじゃん」
5人の中で一番低い声で、それを噛み殺したように安元は笑う。それから頭をポンポンと撫でられた。
「あ、奈々子ちゃん、これ。これじゃない?探し物」
「あーあったぁ!さっすが小野さん!」
「もっと褒めてよ」
「キモい。……じょ、冗談だって!」
バックの中から取り出して小野さんがくれたものは、もう1週間探しに探してたストラップ。軽い冗談のつもりで言ったキモいの一言も、禁句になりつつあるのを忘れてた。本気で凹みかけてしまった。危ない危ない。
中村と杉田さん、それから一番に神谷くんが静か。嵐の前のナントヤラ?その三人に視線を回せば、固まってなにか話してるし。三人よれば文殊のナントカ?そのまま三人はなぜか無言を貫き通した。小野さんが、安元が何か言っても声を出さない。これにはちょっとイラッとくる。
「ちょっと。神谷くん?杉田さん?それから中村。感じわるいぞー?」
ジミニーこと安元に頭を撫でられた。でも何かを言ってくれるわけでもなく、なぜか小野さんと二人、示し合わせたかのように帰ってく。え?
「杉田さんも肉村も、あの二人を見習え」
ようやく聞こえてきた神谷くんの声に再び三人を見れば、なぜか肩組み。真ん中神谷くん。珍しい光景。でも、
「神谷さん、痛いから」
「ななな中村もか?俺、俺も痛いぞ?」
両脇二人に何事が起きてる。神谷くんがパッと手を離すと、なぜか二人も帰ってく。
「あれ?も、もしかして、か、神谷くんと、ふふ二人きり?」
「どもりすぎだ、馬鹿」
おもむろに近寄ってきた神谷くんに、小野さんからもらって握ったままだったストラップを取られる。
「明日俺が探してきてやる」
そう言って、それを自分のバックに。わかりやすい嫉妬に、どうしていいかわからなくなる。
「奈々子、俺以外から物貰うな。俺以外を誉めるな」
慌てて何度も首を縦に振る。
「お前は、奈々子は、俺に愛されてんのを光栄に思いやがれ」
言い終わらないうちにしっかりと抱きしめられた。これじゃあ、首を振れない。変わりに掠れてしまう声で、
「私の方がきっともっと大好きで愛してますよ」
言ってみれば、抱きしめられる力が強くなった。
fin
- 208 -