やきもちきもち
せっかくみんなで遊べると思ったのに。待ち合わせ場所に一人早く着いてしまって、納得したはずのことをまた考える。本来の二分の一の人数だし。6人が3人。なかなか大きな違いだと思う。むぅ、と唸れば、「えい」だか「とう」だかのかけ声と共に、頬に何かが押しつけられた。
「お待たせ。しちゃったお詫び。どーぞ」
にっこり笑顔で差し出されたピュアグミ苺味。
「ありがとう、渉」
時計をみればいつの間にやら待ち合わせ時間を5分程過ぎていて、おとなしく受け取る。
「あれ?たっつんは?」
「まだだよ」
「はいとーちゃーく」
「うわっ?!」
返事をしてくれるはずの渉がバランスを崩す。でも倒れる、となるまでにはいかないように力は調整されてるらしい。
「達央遅刻」
「んだよ、奈々子。コイツもだろ」
「グミくれたもん」
「食べ物で釣られてんな」
渉だから危険はないじゃないか、と口を開こうとして、別の疑問が浮かんだ。なんで渉遅刻なの、達央確信してたんだろ?疑問系じゃ………なかったよね。
「ねぇ、達央。渉が遅刻ってなん」
「はい行くぞー」
あからさまに誤魔化された。なんで?一瞬での不機嫌を感じてくれたのか、渉が頭を撫でてきた。達央の舌打ちが聞こえた気がした。
「奈々子はなに見たい?」
柔らかい声で聞いてくれるから、不機嫌はあっさりと消えてしまう。
「渉、あんま奈々子甘やかしてんな」
「ヤキモチ?」
「死んどけ」
「それヒドいって!」
今とは逆に渉の頭を撫でる。背伸びした足は、すっごいギリギリだけど。仕方なく渉の肩口あたりに片手を添える。少し楽。
「おーれーは、無視かよ!」
「嫌なら達央、私と渉にごめんなさい」
「……ごめんなさい」
棒読みだけど許すことにしよう。渉も同意見らしいし。
広すぎるショッピングモールを、3人で見て回って帰り道。当たり前のように、家まで送ってくれる。揺れる手に自分の指を絡めてく。
「こんなんで俺の機嫌が治ると思うなよ」
「わかってますよー」
外はすっかり真っ暗になって、着いた家の窓から外を眺める。
「なに見てんだよ」
後ろから不機嫌な声と共に抱き込まれた。
「外暗いなって思っただけだよ」
「奈々子、渉はダメだ」
言われたことにキョトンとしてから、押さえられない笑い声を漏らす。
「渉は、じゃなくて、渉も、じゃなくて?」
わかりやすい嫉妬。そうなんだけど、と顔を赤くした達央が、なんだか可愛かった。
fin
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