期限はいらない!


『明日、仕事で会うし丁度いい。その時に返事しろよ』
なんて強引に決めてった。向けられた背中、足早に去っていく後姿。明日?明日って、明日でいいの?!呆然と見送ってしまってから、我に返って、慌てて追いかける。走れば、火照ってしまった頬を風が撫でていって、気持ちいい。

「悠一!」

明日になってしまったら、きっと自分から返事をするタイミングが掴めない。好き。好きなのに。私だって、好きなのに!

「悠一…はっ、はー…も、走るとか久しぶりすぎた」
「奈々子、お前な。せっかく家まで送ってやったのになにしてんだよ」
「追ってきちゃ、いけなかった?問題でも?」
「時間的に危ないだろ」
「……万が一でもあれば悠一が助けてくれるよ。今は近くにいるんだから」
「そういう問題じゃないだろ」
「いいの!」

無意識に悠一の袖口を握ってしまっていたらしく、それを気にした悠一がそこに視線を落として、眉を寄せた。

「わかってんのか?」
「なにが?」
「俺は奈々子が好きだって告白したんだぜ?」
「うん。嬉しかったよ」

背伸びをして、悠一の頬に口付ける。離れて、にっこりと笑えば、珍しく照れた様子の悠一が見れた。

「あのね、返事、明日になったら気後れしそうで、」
「ああ」
「思わず…追いかけて、きちゃった」

予想以上に悠一が照れたままだから、今の自分の行動が大胆すぎたように感じて、照れが伝染してきた。

「で、ね……返事、なんだけど、」
「ああ」

息を吸って吐いて。深呼吸。心臓が痛いぐらいに動いてる。一世一代大告白!

「私も、悠一が好きです!付き合ってください!」

深夜で人通りがいないとはいえ、それなりに大きめの声が出てしまった。悠一は呆気に取られた顔をしていて、反応してくれないと不安になるのに。

「なぁ、」

ようやく反応が返ってきて、呼ばれて、なんだろうと思った瞬間。驚いて反応の鈍った頭で考えられたのは、キスされてるということ。

「ガキじゃあるまいし、キスするんなら唇、だろ?」
「なっ、な…ゆう、い、ち」
「奈々子、取り消しは効かないからな?」

勝ち誇ったような表情。その顔をみて、これからずっと、悠一には勝てないような気がした。それでも、それだからこそ、好きになったんだと思う。悔し紛れにしっかりと抱きついた。もうここが道端であってもどうでもいい。

「悠一こそ、後悔したら、許さないんだから」
「俺が奈々子を選んだんだから後悔するはずないだろ」

俺様の発言に笑う。でもすごく安心できてしまうくらい。ね、愛してるんだよ。明日までなんて期限は、必要ないよ。



fin


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