幸せにするよ


好きなその子は、いつも笑っているような印象があって、実に人当たりのいい、という正当真っ当な子、という印象も付随していた。いつも誰かと一緒にいるような子で、彼氏がいるんじゃないかって噂は当たり障りのない程度、虚構交じり耳にする。でも、実際は彼氏がいないことを知ってる。そうでなかったらこうやって『男友達』と二人だけでご飯、なんてことはしないだろうから。

「みやぁ?お腹減ってなかった?」
「ん?なんで?」
「なんで、って、手、止まっちゃってるから」
「ごめん、ちょっと意識飛んでただけ」

しょうがないなー、みやぁは。と、独自のあだ名で呼ばれて、ドキリと心臓が跳ねる。奈々子がみやぁと呼ぶ度に、少しずつ二人の距離が縮んでいっているような錯覚。

「奈々子、彼氏いないの?」
「どうしたの、突然。いないよ?知ってるでしょ?」
「うん。でも、なんか、聞きたくなって」
「今日のみやぁ、なんか変。仕事、なにかあったの?」
「別に問題ないよ」
「じゃあ誰かとなにかあった?」
「いや、それも問題ないよ」

まだ訝しげに眉を寄せてる表情も、俺のために作られた表情なのだと、不謹慎にも嬉しくなる。

「ね、そういうみやぁこそ、彼女はいないの?」
「いたほうがいい?」
「んーっていうか、いないほうが不思議?」
「それ言うなら奈々子もだよ」
「そうかな?」

そう言って小首を傾げる姿も、そんなことないと思うんだけどだー、なんて言いながらスプーンを口に運ぶその瞬間だって、こんなに君が愛しい。そろそろ限界かな。言ってしまってもいい?

「ね、奈々子。俺は奈々子が好きなんだけど」

スプーンを今口に持っていこうとしたその手を止めて、奈々子が凝視してきた。さらり、と告白したのに、見つめられて、ひどく自分が大胆なことを言ってしまったようで、照れる。

「ほ、本気?みやぁ、冗談言わないで」
「冗談なんかじゃないって。俺は奈々子が好き。付き合ってほしいって思ってる」
「みやぁ……」
「奈々子、顔真っ赤。ね、本気なんだけど、どう?」

真っ赤にした表情は今まで見たことなくて、知らなかった彼女をまた一つ発見。とっても可愛い。

「奈々子?返事、くれない?」
「わ、たし、だって、みやぁのこと、好きだもん」
「え?」
「ずっとずっと前から好きだもん」

きっぱりと告げられてしまった。それならと、きっぱり告げる。

「今日から恋人としてのお付き合い、お願いします」

益々奈々子は真っ赤になった。



fin


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