長期両想い?


今日もなんだか胸がモヤモヤする。達に話したら、恋の病だ!としか言わないから、もうこの話をあいつに振るのは止めようと思う。そうやって飛んだ思考を手繰り寄せ、横に座っている奈々子に意識を戻した。

「なんでいっつも上手くいかないんだろう」

振られたーと泣きつかれるのは何度目だろう。今回もまた、告白する前にして相手に彼女ができたらしい。前回はただの知り合い止まりだったんだっけ?

「奈々子は行動に移すのが遅いんだよ」
「だって、怖いんだもん」

相手を意識した途端、目を合わせなくなったり、話さなくなったり。よもや避けたり。恋に駈けずり回ってるくせに、奥手なのはどうしてなのか。普通、これだけ振られ続けていれば積極的になろうものなのに。

「怖い、んじゃなくて、本当は告るつもりがないんじゃないの?」
「そんなことないもん」
「あっそ」

そうか、そうだよなと萎れた心をひた隠し、強がる。

「恋が上手くいく方法ってないのかな」
「まず奥手なのを治すことじゃん?」
「それができないからいい方法ないのかなって言ってるんじゃない」
「さあ」
「タクはいつもそーやって冷たいんだぁー」

奈々子が片思いを止めないからだ。好きな相手がいなくなれば俺だって。

「やっぱり本命じゃないのがいけないのかなぁ」
「え?」
「え?あ、ダメ!今のナシ!」

無理だから!奈々子の手首を掴んで、逃げれないように引き寄せる。苛々する。モヤモヤするのの最上級だ。

「本命、ってなんだよ」
「タク?離しっ」
「なあ。俺は奈々子のなに?相談役?」

しまった、と思ったときにはもう遅い。ボロボロと落ちる涙を見て、気まずくなって、体を離す。

「……悪い」

卑怯、だよな。俺が言ってないんだからな。

「俺はお前が好きだよ」

言えば奈々子の動きが止まった。信じられないことを聞いたような、ひどく驚いた表情にまでなった。

「ちなみに冗談じゃないから」

とまで言ったのに、一向に動きださない。なんだよ?

「奈々子?」
「な、なに?」
「はぁー。お前な。今の聞いてたか?返事。返事は?」

返事ぐらいしろ、と折角離れたばかりの距離をまた詰める。奈々子の驚いた表情が一変して、真っ赤に染まっていく。

「私、私は、」
「振るんなら早くしろよ」
「違っ…私は、ずっと、前から、タクが好き、でした」
「マジ?」

じゃあなんで他の奴好きだとか言ったり、告ろうとしてみたりとかしてたんだ?内心そう思ってうろたえていたら、答えがあっさりわかった。

「だって、タクってモテるから、諦めなきゃいけないんだと思って、私なんかが好きって言っちゃいけないんだと思って、だから、」
「他の奴でいいいやって?」
「べ、別に誰でもよかったわけでもないんだよ?!」
「ばーか」

ガチでコイツは…。

「お前はどこまでビビるんだよ?言ってみなきゃわかんねーだろ?!」
「はいっ!」

そっと、ゆっくり抱きしめる。

「いつから俺たち両思いだったんだろうな」
「私は事務所で初めてタクに会ったときに一目ぼれだよ」

俺もだ、とはなんだか素直に言えなくて、抱きしめた腕に少しだけ力を込めた。



fin


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