同伴者絶対


ずっと、行こう行こうと言い続けてた巨大遊園地。俺もうそんな若くねぇから、とそんなことはないだろ、とすぐさま突っ込みを入れれるセリフを吐いた10上の彼氏さん。その癖に、開園と同時にパークの最奥のアトラクションまで人を引っ張って走って。おかげでしょっぱなから揺れるわ揺れる。インディーが何か言ってたけど、申し訳ない。聞き取れなかった。

「次何?」
「裕行さんの乗りたいもので」
「タワー」
「また?!」
「じゃあ奈々子決めろって。じゃねーとタワー決定」

そのタワー、なんだかんだで既に4回乗ってますけど。しかも、凄い上手い時間活用しちゃってるよ?なんなの、この遺憾なく発揮されてる裕行さんの計画性。

「んー、じゃあ、クジラのお土産やさん行きたい」
「へーへー。つか、奈々子、今土産買うと邪魔じゃねーの?」
「本当の目的は人魚のショーでーす!」
「そんな騙しはいらねー」

ほらほら、とラグーンの中に入ったはいいけど、あれ?……はぐ、れた?ショーがちょうど始まってしまったから、次まで待たなくちゃいけなくて、クジラの口をくぐったはいいけど、あれ?今の今まで、横で一緒に見てたと思ったんだけど。……とりあえず出て、待ってようかな。

「裕行さん、まさかファンの子に見つかって、一緒に行っちゃった?!」

そんな、まさかね。うん、まさかね。…ちょっと、探してみようかな。レストランで食事、とか?…いない、よね。アスレチックの中には、さすがにいないだろうな。外、出てみようかな。

「って、よく考えたら、外に出たほうが見つかる確立低いんじゃない?」

あー自分バカかもしれない。どうしよう。端っこに座って歩いてる人たちを眺める。ちくしょう、幸せそうなカップルめ。…これは私が迷子なのか、裕行さんが迷子なのか。ふう、と短く息を吐いて俯けば、正面に影が立った。裕行さん?と顔を上げれば、全然全く知らない人。

「あ、の。なにか御用でしょうか?」
「一人?はは、ここに一人なんてまさかね。友達とはぐれちゃった?」
「え?あの、はぐれたにははぐれたんですけど、」
「じゃあ一緒に回んね?あっちにダチいるし、友達探すついでだと思ってさ!」

強引に腕を引っ張られて、コケかけるもギリギリで耐える。

「遠慮します!えっとですね、はぐれたのは友達じゃないんです!」
「いいから来いっつーんだよ」

怖いっ!硬く目を瞑れば、また誰かに腕を掴まれた。

「コイツ、俺の連れなんだけど」

パッと目を開ける。

「裕行さん…」

さっさと知らない人を追い払ってくれて、正面からジッと覗き込まれる。安心して一気に涙が出てくる。

「あのなぁ…ったく。いい。奈々子、とりあえず泣いとけ」
「だって、裕行さんいなくなっちゃうー」
「奥にいたし」
「横にいなかったぁ」
「悪かった」

頭を撫でられたから、空いてる手を両手で握り締めた。

「悪かった。オラ、次行くぞ、次」

泣き顔のままなのに。それでも一瞬で消えた寂しさと不安と、入れ違いになった楽しさと安心にいいか、と思えた。でもそれ以上に、汗だくになってまで探してくれた裕行さんに、惚れ直してしまったからなのかもしれない。



fin


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