計画は順調
久しぶりに、二人一日オフの日が重なって、といっても日曜は私にとっていつも定休日。順一さんにとっては、違うけど。
「なあ、奈々子」
「どうしたの?」
「いや」
ソファーに並んで座っていたら、引き寄せられた。そっと頬に口付けられた。じゃれ付くように、悪戯に喉元を唇が辿っていく。
「くーすぐったーい。こーらっ」
「はいはい。悪戯は止めましょう?」
「もう。どうしたの?」
まだお昼で、太陽だってまだまだ高い位置にいる。その証拠とでもいうように、部屋の中は電気を点けてないのに、充分すぎるほどに明るい。どうせだから、今からでも買い物にでようか?二人で手を繋いで、フラフラと歩いて。それも楽しいし、お昼ご飯がまだだから、どこか食べに行くのもありかな。それとも、それとも 、近くのスーパーに順一を連れ出して、材料買って。二人で作るのもありだよね。順一に聞いてみよう、と横を向いて口を開きかけたのと、順一が喋り始めたのが重なった。
「奈々子からどうぞ?」
「えっと、じゃあ遠慮なく。お昼どうする?」
「こういう場合、ちょっとは遠慮するものじゃないのか?ま、いいけどな」
「日本人は遠慮深過ぎる、ってこの前なんかのテレビで言ってた。で、どうする?」
「食べますよ」
いや、それはそうなんだけどね。うーん、質問間違えたかな?そういう返事を聞きたかったわけではないんだけど……。
「それじゃあ、次は俺でいいな」
「なんでしょう?」
返事をして、存在を忘れかけていた、冷めきってしまったコーヒーを口に含む。後悔、時既に遅し。って昔の人は良いことを言い過ぎてる。
「子供は2人でいいよな?」
盛大に咽た。むしろ、噴出さなかった自分に乾杯?いやいやなに乾杯してんの自分!そんな優雅なことしてる場合じゃなくて、もっと雄雄しく横に座る人物の口を塞いだほうがいいって!
「奈々子?大丈夫か?」
「順一こそ…大丈夫?」
「俺?俺はいつも通りだが、何か?」
「……子作りの予定が?」
あれー?いつも通りじゃないのは私?
「車もワゴン一台買ったほうがいいな」
「…まだ車買う気ですか?」
「お兄ちゃんに妹でいいか?」
「…そう、だね。お兄ちゃん大好きな妹に育てたい…って私、変態っぽい?!」
「いつものことだから安心しろ」
あれー?また再びいつも通りじゃないのは私?
「と、まあ、冗談はここまでにしておくか」
冗…談?
「奈々子は変態じゃないってことだ」
「そ、そっか。って、子供の話は?」
「ん?本気だが。それも冗談のほうが良かったか?」
でもでも。でもっ。
「外、行くか。ランチどこか行こうぜ。何が食べたい?」
「子供って…」
「その後、買い物でもしますか。奈々子」
立ち上がった順一に手を差し出されて、その手を自分も立ち上がって握り返す。
「指輪買って、市役所も寄ってくるか?」
「順一!?」
「子供の前に入籍、だろ?」
あぁ、もう恥ずかしさと嬉しさで泣けてしまいそう。
fin
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