親子争奪戦


裕行をわざわざ大きく迂回して、私の正面に回ってきた。そんな…。パパがこの時間に家にいるの久しぶりなのに。

「どうしたの?」
「奈々子、あのな!」

しみじみと返事をしたら元気よく名前を呼ばれた。息子に名前で呼ばれるのはマンガ、ゲームの世界だけだと思ってたのに。現実に有り得るとは。横目で裕行を盗み見れば、眉を寄せてる。

「あのな、母さん、だろ」
「裕行は黙ってろよな」

いつからウチの旦那と息子は仲が悪くなったんだろう。というか、両親共に呼び捨てる息子って…。

「かっわいくねー」
「男なんだから可愛くないほうがいいんだ!」

というか、さっきから裕行は自分の5歳の息子に敵対してない?そんなに名前で両親を呼ぶ息子が我慢ならない?そこまで口達者になったのは、半分以上裕行のせいなのに。ことあるごとにおかしなこと吹き込むから。

「なぁ奈々子!」
「うん。なぁに?」
「裕行より俺の方が好きだよな!」

キラキラと効果音がついても間違いない。そんな目でお母さんを見つめないで。

「うん。好きだよ」
「はぁ?!オイ、奈々子!」
「裕行は黙ってろよ」
「そんなこと言う悪ガキは、」

こうだー!とヤケクソのように叫んで、自分の息子を小脇に抱えて玄関に向かって、小走り。靴を履いて、息子にも履かせて、そしてようやく振り向いた。

「なにしてんだよ、奈々子。行くぞ?」
「え?」

裕行がこっちを向いたまま玄関のドアを開ければ、可愛い息子が

「おっでかけー!おーでかけー!」

と元気よく飛び出した。急に飛び出したらダメだと言っておかないと。

「奈々子?…置いてく」
「え?…や、やだやだ!」
「じゃ、さっさとしろ」

さっきの裕行と息子のやり取りはこういうことだったの?アレ?なんか私だけ蚊帳の外じゃない?ドアを出てしまった二人を追いかけて、慌てて出れば横から鍵が差し出された。無事役割を果たした鍵を返せば、そのまま手を繋がれた。

「あー!裕行ズルいぞ!」
「お前が先に行くからだろ」
「奈々子、反対の手ちょうだい!」
「はい。もー二人とも喧嘩しないの」

なんで親子は似てしまうんだろう。それも変な部分ばかり。

「お前を好きだから仕方ねぇんだっつーの」
「裕行よりオレのほうが奈々子を好きはおっきいからな!」
「だぁからオイ!奈々子は俺のだってーの!」

モテる女はツラい?!



fin


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