あっちこっちそっち


電話で呼び出された。しかも深夜に。来てよ、今すぐ。とだけ言われて切れた電話を無視するわけにもいかずに、家を出た。その途中で電話が入った。今度はなんですか?

「もしもし?なぁに?今向かってるよ?」
「あ、マジでー?じゃあさ、コンビニでビール買ってきてよ」
「……ないの?」
「ないの」

文字化させたら、今の台詞、絶対最後に音符マークとかついちゃってるんだ。ハートマークとか。しかたない。惚れた弱みだと思って…思い込んでおこう。パシリになってるわけじゃないはず!

「わかったよ」

コンビニに寄ってビール缶を2本とつまみ代わりのお菓子を2、3種買い込む。コンビニを出るとまた電話。今度はなに?!

「今度はなに?」
「今どこ?」
「今?んっと、コンビニ前」
「俺んちの近くの?」
「そう」
「んーりょーかーい」

ツーツーとあっけに取られてる間に簡単んい切れる電話。………とりあえず向かうか。と、歩きだせば、また電話。なに?今日は電話デー?いやいや、あまりにも自分ネーミングセンスがなさすぎる。って!考えてる前に電話に出ろって話ですよね。

「はいはーい」
「その辺にタバコの自販機ある?」
「んーっと、あ、あるね。って、深夜だから販売休止だよ?」
「そうだねー」
「う、ん?」

どうしたいんだろう?

「自販機に近づいてよ」
「うん。……っ?!」

思わず電話を切る。

「突然切るなんて酷いなぁ。奈々子?なにボーっとしてんの?」
「こここここっ」
「鶏?そんなことより、ほら。奈々子、それ貸して」

手に提げていたビニール袋を取られる。ビール缶2本は意外に重かった、じゃなくて!

「なんで浩輔ここにいるの?!」
「なんで、って奈々子ちゃんのお迎え?」
「じゃあコンビニまで来ればよかったんじゃ…」
「えー」

こっちこそ、えー、だ。

「あ、そーだ。奈々子」
「な

抱きしめられた。

「寒い中、わざわざご苦労さま」

頬にキスされる。

「なにっ!?」
「あ、あとやっぱコレ重いから奈々子持って」
「さらになにっ!?」

受け渡したはずのビニール袋が返ってきた。

「あ、あとさぁー」
「……まだなにか?」
「愛してるよ?」

あー次から次へと振り回してきて!バカ浩輔!となんだか私まで天の邪鬼。



fin


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