突如自覚


「くしゅ!」
「とりあえずシャワー!あ、ああ、服!着替え?俺の貸すから!シャワー!」
「はーい」

突然の雨に降られて、これはこれで、今は夏だし、濡れても問題はないだろうと余裕で歩いていたら、家がこの付近だったらしい保村さんに出会った。人を見るなり、なにやってんの!と、持ってた傘を私に差させて、この時点で濡れる必要のなかった保村さんまで濡れてしまったのだけど、手を引っ張られて連れてこられた保村さんの家。眺めていたら、くしゃみが飛び出た。それを聞いた保村さんが、私以上に慌ててシャワーを使えと勧めてくれるから、着替えも貸してくれると言っているのだし悪くない。少しぬるめの温度に合わせてお湯を被る。もうこれぐらいで大丈夫だろう。お風呂場から出る。

「なっ?!」
「へ?……き、きゃー!!!」
「なんでいんだよ!おい、ヤス!ヤース!」
「いいから吉野さん出てってー!」

とりあえず吉野さんを脱衣場から追い出す。お母さん、お父さん……娘、一生の不覚です………。なんでいる?こっちが聞きたい!!

「よっちん!いつ来たのよ!ってアンタまでなんでずぶ濡れなの?」
「来る途中で傘飛んでったんだよ。文句あっか?つーかなんで奈々子がいんだよ?マジ?そーゆー関係?」
「帰り道でずぶ濡れでいたから拾ってきたの」

ドア閉めていても会話丸聞こえ…どうかお隣さんまで聞こえてませんように。

「保村さん、洋服ありがとうございます。お借りします。吉野さん…コンニチハ」

保村さんのTシャツは思ったよりブカブカになったけど、生地が厚めで下着をしてなくても問題はない。下はジャージを出してくれたから平気。二人で向き合って座って、言い合っていたようで、横まで行くとこっちを向いた。保村さんは笑いかけてくれたけど、なんで吉野さんは固まるんでしょうか。

「服平気?」
「大丈夫ですよ」
「よかった。今からデリバリでピザとるけど奈々子ちゃんも食べてく?」

断ろうとして、お腹が鳴った。

「ご迷惑じゃなければ」
「ん。好き嫌いはない?よっちーん戻っておいでー」

再び吉野さんを見れば目が合った。眉間に皺寄せて見られてるのは、正直居た堪れない。というか私なんかしましたか?

「ムカつく」
「「は?」」

吉野さんが呟いた言葉に保村さんと二人して反応してしまった。吉野さんは私と保村さんの顔を交互に見て、更に爆弾投下。

「なんで奈々子見つけんのがヤスなんだよ」
「それは偶然じゃないですか」
「よっちん俺注文してっから」

私が呆気に取られてると、保村さんはピザの注文をしに、なぜか死角となる場所に行ってしまった。どうしたもんかと考えていれば、ジャージを引っ張られた。どうかしましたか?と聞こうとして、最初の一文字を発音したところで遮られた。

「つーか奈々子はヤスの服着てんな」

結局口にしたのは全く違う言葉になってしまった。

「吉野さん好きです。吉野さんは?」



fin


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