予測不可能


「いつかは別れなきゃね」

あぁーまたこの子は。

「奈々子、そう思った理由は?」
「え?だっていつかは紀章も私も、結婚することになるじゃん」

そうくる?

「奈々子、それは、」
「ん?なんか変なこと言った?」
「いや、俺も奈々子も結婚することにはなるだろうけど」
「でしょ?だから、別れなきゃ」

俺が聞きたいのは、間違いなくそういうことじゃない。っていうか、奈々子には俺と結婚するっていう選択肢はないの?それとも遠回しな、別れたいのよ宣言?

「奈々子、俺は挫けそうだよ」
「ん?なんで?」
「俺が他の誰かと結婚してもいいの?」
「そうは思ってないよ!」

そう思ってるならなんで?

「思ってないけど、初恋は実らないっていうし」
「へ?」
「なぁに、間抜けな声出して」

出したくもなるだろ!

「奈々子…まさかその迷信、信じてる?」
「信じるもなにも真実じゃないの?」
「いや、きっとそれ、う」
「嘘だっていう確証もないよね?確か」
「……あぁ…まあ」

確証はないけど、それは実際実らなかった方たちの負け惜しみというか、ポジティブに考えるための言い訳というか。

「でもこういうのって、いつ別れたらいいのかな?」

え?それは答えを求められてる?

「遅すぎても結婚時期なくなっちゃうでしょ?だからって、今すぐは嫌だしなぁ」
「奈々子、どうしても別れる気?」
「だって、紀章、結婚しなくちゃじゃない」
「そうなんだけど、それは」

どうしたらいい、どうしたら。考えろ、谷山紀章!

「奈々子!」
「はっはい!」
「別れよう」
「っ?!」
「それで」
「…それで?」
「もう一回、俺とやり直してください。」
「ん?!」
「これで奈々子は、初恋じゃなくなっただろ?」
「そうだけど」

初恋は実らないはクリア。問題は、俺と奈々子はそれぞれで結婚するんだっていうことの訂正。………あ、そうじゃん。

「さらに」
「さらに?!ちょっ、紀章?!」
「奈々子、結婚しよう」

………あれ?反応がない?

「奈々子?」
「………誰と?」
「え、いや、俺と」

………え?無反応?

「奈々子?」
「バカ紀章!」
「はぁ?な、ちょっ、なっなんで泣いてんの?!」

泣くほど嫌だったとか?

「さんざっ私、悩んで、のに」
「奈々子?」

恐る恐る抱きしめてみる。

「結婚、私としてくれるの?」

不安げに揺れる小さな声が耳に届いた。この可愛いモノをどうしてくれよう。



fin


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