おめでとう


結婚する時だってドタバタがあって。今でもあれは、結婚しようと付き合おうを言い間違えてくれた渉のせいだと思ってる。そして約10ヶ月前。ドタバタ騒動が起きないはずがない。「子供ができました」と告げれば、

「おめでとう、奈々子ちゃん!」

他人事かい!と心の中でしっかりツッコミを入れてから、にっこり笑顔で

「私と、渉の、子供だからね」

ピタリと渉は動きを止めて瞬間、

「ああああ!そうだよね?!どっどうしよう?!」

いや落ち着けと何とか宥めたものの、ドッタンバッタン。そしていざ子供が生まれでみれば、ようやく落ち着いてくれたみたいだけど。………皆がきてるから?

「いや、無事に生まれてよかったな」
「杉田さん…ありがとうございます」

ギャーギャー騒いでる4人を放り出して、一番冷静な杉田さんが祝辞をくれた。やっぱり一応ちゃんと年長者なんだなぁ。

「それにしてもだな」
「はい」
「あの中で泣き出さないとは大物だな」

それについては苦笑を浮かべるしかない。頼むから、渉。落とすことだけはしないで。いい意味でなく、先刻から、私も杉田さんも渉から目が離せない。

「お前が父親とかってガチ信じらんねー」
「達、そんなこと言ってやるなよ。なー、みっちゃん」
「そうだぞ、達。渉、泣いちゃうじゃん」
「なっ泣かないよ!」

その様子にいよいよ危機感を持ったのか、杉田さんが渉から取り上げてきてくれた。……抱き方上手いのがなんでかは追求しないでおこう。我が子はパパから引き離されたにも関わらず、ぐっすり寝てくれている。安心して目を離して、作り上げたご飯をダイニングに運ぶ。キッチンから出たところで、渉と光くんが手伝いに来てくれた。

「杉田さんのが渉よりパパって感じじゃね?」
「達…今日は祝いに来てるんだぞ?」

拓くんは達くんの子守化してる。渉はヘコみながら料理を運んでる。

「渉に似ても、奈々子ちゃんに似ても素直ないい子になるよ」
「ありがとう、光くん」

なんだかほのぼのしながら、光くんと渉を眺める。眺めていれば、拓くんが達くんの耳を引っ張って来た。

「奈々子ちゃん、おめでとう。ほら、達」
「…おめでとう」
「達くんはなんで不機嫌?」
「……渉ずりぃ」

母親になると、友達に対しても心は寛大だ。鷹揚に聞き流す。そして訪れる沈黙。

「奈々子ちゃん?!拓?!たっつん?!なに、その沈黙?!」

渉のちょっと悲痛な叫び。わかってやったことだけど、面白い。予想はしてたけど、面白い。

「お前のママとパパは面白くて良かったな」

杉田さんの一言に全員の笑いがさらに悪化した。



fin


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